姫崎由美:gifted —誰かが誰かを思うこと— |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集3 |
公開日: 2013年 11月 13日 |
11月のギャラリー企画展示として、姫崎由美写真展「gifted ̶誰かが誰かを思うことー」を開催いたします。本作は、2009年第15回酒田市土門拳文化賞を受賞。2011年には同名の写真集が出版されました。各地での展覧会での反響、写真集へ寄せられる関心は、現在も波紋のように長く継続中です。 姫崎由美氏は1967年岡山県倉敷市生まれ。1990年から写真家・松本路子氏のワークショップ「エムズ・ワークショップ」に参加、作品制作を続けています。1997年12月からNPO法人ぱれっとの運営する知的障害者のケアホーム「えびす・ぱれっとホーム」の職員となり、現在に至ります。その仕事、毎日の生活、日々の中から生み出された「gifted-誰かが誰かを思うこと-」で、第15回酒田市土門拳文化賞受賞。現在も新たな作品に向きあいながら活動を継続中です。 今回ギャラリー主催の展覧会では、「gifted―誰かが誰かを思うことー」をメイン展示にしながら、デビュー作「愛しのオストレル」もご紹介いたします。「愛しのオストレル」は、姫崎氏が1994年に訪れた北海道の牧場で出会った美しい馬たち、牧場の毎日や人々、自然に惹かれ、その後再訪し居住を共にしながら働いた日々の中から生まれた作品です。現地では、現実が抱える厳しい問題に直面しながらも、命、労働、なお愛おしい存在が丁寧にカメラでとらえられています。1998年に松本路子氏企画・監修のもと大阪で展示された「愛しのオストレル」は力強く温かい作品として印象に残っていました。その後、写真 集「gifted ―誰かが誰かを思うことー」の発行にともない、写真集に載せる文章を書かせていただくことになりました。そのような嬉しい繋がりが続き、このたび展覧会を開催いたします。 姫崎由美という写真家の背骨は一体どのようなものだろうと思いを馳せ、写真を見返します。カメラを向ける側へ注がれる感情、シャッターを押すことで即映像化されることの難しさやもどかしさを十分実感しながらも、シャッターを押すという選択。写真からは、たまらなく愛おしい存在を確かにとらえたいという使命感に近い思いがあってこそ定着する、実存が見えてくるようです。 一人の写真家のこれまでの歩み、追求する営みが織りなす写真への体験として、2つのシリーズをご覧頂ける構成で企図いたしました。ぜひ実際に写真の前で、まなざしを重ねていただけましたら幸いです。ご来廊お待ちしています。 [作家コメント] ●「gifted―誰かが誰かを思うこと―」ステートメント 彼らがそこにいるだけで、この生きにくい社会の中に確実にゆるやかな空気を生み出していると感じる。もちろん私達と同じ現代社会に生きているので、そばにいればお互いの感情に行き違いが生じることもある。しかし誰かが、その人たちのことをいつも心のどこかで気にかけ、思いやるというコミュニティが、彼らを中心にして形成されていることは確かだ。 また天から与えられた(gifted)のではないかと思えるような自然の姿を見ていると、その存在自体に価値があるように思える。何年間かかけて「出会えてよかった!」と思える瞬間にシャッターを切り続け、今回のポートレイト写真をまとめることができた。 彼らと向き合い、その存在を見つめることで、誰もがのびやかに生きていける社会を探る手立てが得られるのではないだろうか、今私はそう思っている。 ●「愛しのオストレル」ステートメント 八木牧場を中心に、何回かにわたり、北海道のサラブレッドを育てるいくつかの牧場もまわった。牧場で働く人々や馬やさまざまな出来事を通して、命あるものへの思いやりの気持ちや、それだけではすまされない厳しい現実も知ったけれど、それでも人も馬も自然も、自分のまわりのすべてのものが愛しくてたまらない…、そんな気持ちを強く感じた日々を過ごした。」 [作家プロフィール] ・個展 ・ワークショップ 作家トーク 11月21日(木)18:30~19:30(参加費800円/要予約) 全文提供:Port Gallery T 会期:2013年11月22日(金)~2013年11月30日(土) |
最終更新 2013年 11月 22日 |