V(ヴィ) |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集3 |
公開日: 2013年 10月 15日 |
歴史はひとつではない。ひとたび世界史を俯瞰すれば、被害者と加害者、勝者と敗者は、 立場を入れ替えながら複雑に絡み合い、ちっぽけな個は瞬く間にそのアイデンティティを見 失うだろう。だから時の為政者たちによって恣意的に歪曲化された「ひとつの歴史」を共有 することでしか、世界はとりあえずの均衡すら保つことが出来ない。 ゴダールの『アワーミュージック』は、敗者/勝者を考える意味で示唆的な映画だ。その中で、 主人公オルガやパレスチナの詩人を借りたゴダールの発する言葉は、日本語字幕であるが 故に、むしろその私の網膜により強烈に焼き付いた。 「勝利より敗北の中にこそより多くの示唆と人間性が存在する。 喪失の中にこそ偉大な詩は生まれる。 ... もし私が勝利者の側にいたら敗北への連帯を表明しただろう。 ... 詩をもたない民族は打ち負かされた民族だ。」 ... 「無から築き上げよ。 火事のとき家具を運ぶのは馬鹿げている。 敗者としての幸運をつかむのだ。」 この映画は、サラエヴォを題材としているが、我々日本人に置き換えることは容易だし、 それは許されるはずだ。とすれば、敗者である我々にとっての幸運とは何であるのか? 私はこの小さな展覧会でそれを問うてみたいと思った。 追記:私はこの展覧会のタイトルを当初文字通り「私たちの音楽」としようともしたが、 敬愛するアーティスト南川史門が同じタイトルで先に個展を行った。私はこのシンクロニシティ に苦笑しつつ、タイトルの変更を余儀なくさせられ、改めてのタイトルを「V」とさせて頂いた。 ◉参加アーティスト 塚田守 (小山登美夫ギャラリー・ベルリン在) 全文提供:スプラウト・キュレーション 会期:2013年10月12日(土)~2013年11月9日(土) 時間:12:00ー19:00 休日:日・月曜、祝日 会場:スプラウト・キュレーション |
最終更新 2013年 10月 12日 |