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高石 晃:シャンポリオンのような人
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 8月 27日

 

児玉画廊|東京では8月24日(土)より9月28日(土)まで、高石晃個展 「シャンポリオンのような人」を下記の通り開催する運びとなりました。
児玉画廊では、昨年ignore your perspective 15 -ノヴァーリス「青い花」 について-(児玉画廊|東京)、本年3月のignore your perspective 18「Fasc inating Analysis」(児玉画廊|京都)と、これまで2度のグループショーにお いて高石を紹介致しました。そして今回の児玉画廊における初個展では、 2008年トーキョーワンダーサイト本郷での個展「RISE/SET」以来、満を 持しての本格的な新作発表となります。高石の作品の特徴である、油彩の 厚みを肌で感じさせるような剛健な筆触が作り出すやや荒いマチエール、 遠近感や空間性を強引に屈折させたような錯視的な構図、一瞥しただけで は意味を読み取る事ができない不可解で謎めいたモチーフ、それらによっ て見る者の心は好奇な夢想にざわつきます。
「夢の中の、そこでだけ通じている文字や言語、あるいは夢の後味のよ うなもの。」自身の作品を指した高石のこの表現は、我々が高石の作品を 見るにあたっての手がかりになります。目覚めてしまえば全く不条理なこ とでも、夢の中ではあたかも道理にかなっているが如く、人は空を飛び、 聞き慣れぬ言語を発し、時間と空間は自由に伸縮します。しかし、ここで 高石の言っている夢の例えの本意は、現実世界と乖離した現象それ自体に ではなく、その非現実的な現象が可能となる「夢」という特殊な舞台にあ ります。高石の絵画において、キャンバスはある種の「夢」のごときプラ ットフォームとして様々な現象をその上で巻き起こし、高石はその舞台上 で謎めいたモチーフを投げかけ、さぁどうぞ解読して下さい、と言わんば かりに迫ります。
高石の近作には、特徴的に紐状のモチーフが描かれています。それは子 供の悪戯書きのような必然性の無い線が、絵の中に忽然と現れているよう に見えます。階段や部屋の内部のような具体性のある空間を意識した描写 の中で、紐は意識的に切り離されたような描き方をされているために、そ れはあまりにも唐突で、見る者の思考を一時停止させます。しかし、それ をしてなお見続けていると、この紐の二次元上のうねりが、逆説的に絵画 の空間性を表出させているのだと気付きます。空間と紐の描写の間にある 断絶が、何かの拍子に同一の空間に存在するものとしてオーバーラップし、 紐があたかも階段の奥から伸び上がってきているように、あるいは、部屋 の内部を跳ね回るボールの軌跡のように縦横無尽な動きを見せ始めるので す。一枚の絵画の中に存在する、階段、紐、くしゃくしゃにされた紙、な どのモチーフは、雑然としていながらも何かを暗示するようで、それに惹 かれるままに目を彷徨わせているうちに、困難な知恵の輪が嘘のようにす るりと解けるようにして、画面の中の現象に自分の感覚が融和していくの が感じられます。すると、空間が絵画の平面性を貫いて、高石の絵の中に ある非現実的な世界が現実の空間に滲み出して、壁に掛かったただの絵画 ではなく、そこにある(仮想的であったとしても)世界への扉としてあんぐ りと口を開けているように思えてきます。
ヘンリー・デイビッド・ソローが著書「森の生活」の中で、植物の葉脈 が葉の形状を成すある種のパターンとなっていて、それは人間で言えば内 蔵と人の外形の関係であり、万物にはそうした密やかなパターンがあって、 シャンポリオン(ヒエログリフの解読者)のような人がその自然の隠された パターンを解読することによって自然の真理に触れるのだ、という主旨の 言説を残しています。高石にとって自身の作品も同様に、描くと言う行為 が自身の内面に噴出するイメージを解読するための行為であり、そして高 石自身が一度読み解いたそれは独自の「夢の中の文字/言語」として絵画面 というプラットフォームに収められ再び秘匿されるのです。高石の作品を 前に、我々はシャンポリオンのような人であらねばなりません。  今回の個展では、ペインティングとドローイング作品を何かを暗示する ように織り交ぜた構成となっており、展示空間そのものが未解読言語に挑 むような好奇心に満ちた高石の世界観の延長として表現されます。高石の 「夢の後味」を、ぜひお楽しみください。
つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜 しくお願い申し上げます。

敬具
2013年8月
児玉画廊 小林 健


全文提供:児玉画廊 | 東京
会期:2013年8月24日(土)~2013年9月28日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:児玉画廊 | 東京
最終更新 2013年 8月 24日
 

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