増本泰斗:Delicate Tongue |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 7月 16日 |
増本泰斗は、2004年より都内を中心に個展・グループ展などで作品を勢力的に発表してきました。 作品は写真、映像、インスタレーションと多岐にわたり、日常そのものへの懐疑を日常から離れることなく観察し続け、その辛辣な視線から生み出される表現は、辛辣であるが故のどこか温かいユーモアが漂っています。 「Delicate Tongue」は、オープニングパーティーにて公開撮影される新作のパフォーマンスを中心としたインスタレーションです。展示初日は、数人のパフォーマーによる同一テキストの朗読を主な題材とした撮影と同時に、プロジェクターによってその映像を壁面に映し出します。公開撮影という手法を用いることで、パフォーマーだけでなく鑑賞者、同じ場にいるすべての者を巻き込み、その姿や表情など、あらゆる反応を瞬時に映像化していきます。 増本が仕掛ける「パフォーマンス」と「公開撮影」。異なった二つの行為が交錯する中で突発する私たちの挙動が壁面へ映し出されることで、見るものは自身に起こる大小の戸惑いに目を止めることになるでしょう。 増本 泰斗 YASUTO MASUMOTO 個展 ※全文提供: gallery Archipelago |
最終更新 2009年 7月 04日 |
ギャラリー壁面に流れているのは、展覧会初日に行なわれたパフォーマンスの記録映像。それは声に出すのも躊躇われる、セクシャルで破廉恥な内容のテキストの大人数での朗読風景を撮影したものである。ビデオカメラはそのテキストの大人数であったり最終的には一人でもあったりする朗読者の表情の移ろいが撮られ、その状況に顔をしかめたり無視したりする傍観者が撮られ、あまりのいたたまれなさから(?)会場を出る観客が撮られ、撮影者自身も撮られている。そして会場には一つのカメラが備え付けられ、それを見ている私の映像が同時にもうひとつの小さいテレビモニタに映し出される。 傍観者よろしく醒めた目でそのパフォーマンスを見ている私もまた見られているという逆転は、決して目新しいものではない。テキストの内容のあまりの馬鹿馬鹿しさが、見る/見られるという対立自体を宙づりにするという点に本展の痛快さがある。声がこもり、映像ではほとんどの朗読内容を聞き分けることができない。だが心配することはない。テキストは壁面に貼り出されている。あなたは果たして、どんな顔をしてそれを読むのだろうか。