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エリック:中国女
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 11日

画像提供: AKAAKA copyright(c) ERIC

エリックは2008年秋、写真集『中国好運』(赤々舎)を刊行し、木村伊兵衛写真賞最終候補作品、さがみはら写真新人奨励賞を受賞しました。木村伊兵衛写真賞の最終審査に当たった土田ヒロミさんは、以下の評を残されています。

「暴力的ともいえる至近距離でのスナップショットは、肉眼の視覚を超えた形象を見事に捉えて秀逸である。『中国好運』は、北京オリンピックを直前に沸く中国。その表層に隠された欲望の貌を悲壮なまでに赤裸々に捉えている。また、中国への関心は、作者自身の中国人としてのアイデンティティを問う個人的な作業としても始めたという。己を穿つように踏み込んでいった作業がこのドキュメントを一層リアリティあるものにしている」

今回展示する「中国女」はすべて、『中国好運』刊行後、2ヶ月余りをかけて再び撮影された新作です。「もっと農村や地方に入り込みたい。撮影スタイルも日中シンクロにこだわらなくていいかもしれない」と、刊行後に語っていたエリック。 今回の旅で、雲南地方の伝統的な祭である水かけ祭や泥かけ祭を目指し、変わらず路上でのスナップも繰り返しながら、フィルム400本分を撮影しました。

エリック自身が驚いたことに、そこに立ち現れたのは「中国女」。『中国好運』では、性としての女はほとんど写っていないとも言えますが、今回は、女が、それまでになかったエネルギーと切実さを負って出現しています。スナップによって捕まれたのは、むしろ写真家であるかのような遭遇。遭遇している、相対しているという抜き差しならない眩しい一瞬。「中国女」は、もはや画像そのもののインパクトという次元を抜けて、写すことの根源的な可能性に触れ、性と生がかかわる大きさへと、私たちを誘います。

むろん、これからのエリックにとって途上にある作品群ではありますが、重要な兆しとしてAKAAKAはこれを展示したいと考えます。全80点、未知の道を歩くようにスペースを廻っていただく過程で、おひとりおひとりが、ひとりひとりの「中国女」と邂逅していただければ幸いです。

※全文提供: AKAAKA

最終更新 2009年 7月 10日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


北京オリンピック開催前の中国の人々を撮影した『中国幸運』(赤々舎)を昨秋刊行したエリックによる、シリーズ続編とも言える個展。作品はすべて『中国幸運』刊行後に中国で撮られたものであり、今回のテーマは「女」である。会場では天井からプリントが吊り下げられており、鑑賞者はまるで繁華街をひた進む中で「中国女」とすれ違うかのようだ。流されていた『中国幸運』撮影中のエリックを撮った映像からも明らかなように、この写真家は人々を至近距離から撮ることに対してまったく躊躇がない。だから一瞬の刹那、まさに切り取られてしまった人々は、撮られることにその瞬間では気づいていないために生(なま)の表情をこちらに向けているのである。


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