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特集「版画・図案・オブジェ」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2013年 4月 05日

恩地孝四郎 詩画集『飛行官能』より 1934年 和歌山県立近代美術館所蔵

版画の特徴のひとつには複数性があります。この性格によって版画は数多くの挿絵や広告、雑貨などに姿を変えて私たちの身近な生活の中に入り込み、「用の美」として親しめる側面があります。

1900年代以降の日本の創作版画は、文芸雑誌や詩集を彩るための「用の美」の中で発揮される「版の美」に着目した作家たちから始まったとも言えるでしょう。1918年には日本創作版画協会が結成され、さらに1927年からは官設の公募展に版画が受け付けられるようになります。しかし版画は複製印刷と混同されがちで、美術のジャンルとして認知されるのは容易ではありませんでした。版画家たちは、版画について説明する必要に迫られ「創作版画は、複製を目的とせざるものにして、自刻自摺をもって、一種の絵画を創作する事を原則とす。」と定義づけました。それは版画を育んできた土壌の大切なある部分を概念的に否定しはじめた瞬間だったのかもしれません。
とはいえ、創作性を定義できないのは言うまでもありません。版画家たちは「用の美」の分野でもいきいきとした作品を残し、またそれを受け入れ、越えたところでも数々の作品を生み出しています。

この展覧会では、いわゆる版画家たちの蔵書票や千代紙、ポスターなどをはじめ、「用の美」の追求者である工芸家による版画や、版画家・工芸家による版を用いた創作的な図案、また多彩なアーティストが携わった挿画本やブック・オブジェを展示し、その魅力をご紹介します。

主な出品作家・作品(予定)
田中恭吉《蔵書票》1914、藤森静雄《封筒図案》1923、恩地孝四郎《飛行官能》1934、川上澄生《ろまんちっく千代紙》1930年代、バーナード・リーチ《天壇》1916、富本憲吉《壺》1920頃、河合卯之助《ほたるふくろ》1924、浜口陽三《葉》1969、加納光於《アララットの船あるいは空の蜜》1971-72、大家利夫《書物装飾・私観》2001、山本容子《シェイクスピアのソネット》(大家利夫による特装本)1995、藤井敬子《朱色の》2008ほか23作家120点

観覧料 一般340(270)円、大学生230(180)円( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上、障害者の方、県内に在学中の外国人留学生は無料
*コレクション展2013-春 と共通

全文提供:和歌山県立近代美術館


会期:2013年3月9日(土)~2013年5月19日(日)
時間:9:30 - 17:00(入館は16:30まで)
休日:月曜日(ただし4/29、5/6は開館し、翌4/30、5/7休館)
会場:和歌山県立近代美術館

最終更新 2013年 3月 09日
 

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