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柴田健治:暗黒
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 9月 21日

柴田健治「274938707」2011
油彩・キャンバス
79.1 x 100.1 cm

タグチファインアートでは上記の期間約4週間にわたり、柴田健治の作品を展示します。

柴田健治は1971年新潟県生まれで現在茨城県在住。1998年に東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。1997年のギャラリーQにおける初個展以来、東京を中心に数度の個展と、東京都現代美術館アニュアル2002「フィクション? - 絵画が開く世界」展やカスヤの森現代美術館での「アテンプト」展(2007, O Jun氏 企画) をはじめとするグループ展で作品を発表。着実に評価を積み上げてきました。

「鏡面のように平滑な絵画」

柴田は東京藝術大学在学中から一貫して、一見するとオーソドックスともいえるモノクロームの抽象絵画を制作してきました。それは微妙な色彩によって画面構成され、鏡面のように平滑で光沢のある表面を特徴としています。暗褐色や暗灰色、あるいは深緑色をたたえる茫漠とした画面には、ほのかに赤や青の色彩の気配が漂い、ときにある奥行きや光、風景のようなイメージ、イリュージョンを観る者にもたらします。近年は明るい青色や赤色の作品も制作していますが、静謐さをたたえた美しい画面は、高い完成度、緊張感をもって観る者を魅了します。

「サイコロの目」

柴田の作品タイトルは常に9桁の数字です。これはサイコロによって偶然出た数字を並べたものです。彼は自分の作品には特別に重要な作品は無く、どれも等価であると考え、こうした題名の付け方を採用しています。

「皮膜としての絵画」

柴田の仕事は、色彩や形態、構成、筆跡やイリュージョン、さらに作品タイトルという、これまで絵画を成立させてきた要素や条件を極限まで抑制しながら、それでもなお絵画として成立しうる限界点を探ろうとするものです。彼は古典絵画にみられるような表面の平滑さにこだわり、ある深さで視線をはね返すような奥行きの感覚を生み出すべく刷毛を操作して絵の具を重ねます。それは絵画をその原初的な地平、すなわち薄い皮膜としての平面・二次元性へ還元しようという試みであるといえます。そして現代にあえてこうした抽象絵画を描く行為の困難さに対する作家自身の自覚が、彼の作品に強度や緊張感を与えているのです。

「暗黒」

今回の展示のタイトル「暗黒」は前回の「夾叉」と同様、柴田の友人である詩人、 藤原大典の詩からとられています。

暗黒

未だ理解が到らない闇の中の何かではなく
光を当てて明るみに出すための暗闇という場所ではなく
「自らが暗黒である」こと
覚醒というロマンティズムを謳いあげる装置とは違う
暗黒であるが故に、我々の全てが何かで場所たり得るように
我々は暗黒になって視力を得ているのだ
光りの当たる地にあっては、その内側だろうと外側だろうと
やはり盲になってしまう
我々よ暗黒たれ

藤原大典(詩人)

私たちは絵画に限らず芸術作品に対して「わからない」と思うことがあります。多くの場合それは単純に、何が描いてあるのかわからない、作者の意図がわからない、という容易にあきらめのつく「わからない」です。しかし、それとは異なる次元の「わからない」状態があり、むしろそれがあるために、私たちは知覚を総動員し、より一層集中して作品を受けとめようとします。 優れた作品には、ずっとわからないままで、それでいて、あるいはそれだからこそ、人を惹き付ける謎や誘惑があるのではないでしょうか。

今回の展示はタグチファインアートにおける3度目の個展となります。ぜひご高覧下さい。


全文提供:タグチファインアート
会期:2012年10月13日(土)~2012年11月10日(土)
時間:13:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:タグチファインアート
最終更新 2012年 10月 13日
 

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