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小金沢健人+鈴木ヒラク「パンタ・レイ」
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 7月 25日

[Top]
Takehito Koganezawa
drawing plate (as performance tool)
2011
mixed media on paper

[Bottom]
Hiraku Suzuki
Casting
2011 - 2012
spray paint on printed paper

[Left]
Takehito Koganezawa
performance at Langen foundation
2011

[Right]
Takehito Koganezawa
performance at haus am waldsee
2012

[For each]
Hiraku Suzuki
Casting
2011 - 2012
spray paint on printed paper

[作家コメント]
ここ2年ほど、自分の興味は、" 映像を演奏する" ことに向かっています。これまでにやってきたインスタレーション、ドローイング、ビデオなどの作品が、パフォーマンスという場を得て、一気に収斂していくようなのです。
" 映像を演奏する " ということを正確に言うと、見ることと体を動かすことを、映像を経由したフィードバックの回路にしてしまうという試みです。身体部位の動きは細かく分割されていきながら、捉えようとする波はより大きなものになります。
「ビデオカメラはフィルムカメラとは全然違うもので、むしろマイクロフォンに近い」とはビル・ヴィオラの言葉ですが、そのビデオカメラの特色‒リアルタイムの撮影/投影(増幅)は 記録することよりも流れ続けること、記憶より現在にその本質があります。

小金沢健人


ちょうど一年前、ロンドンで初めて鋳造による制作をしたとき、僕はこの「鋳造 (casting)」という語が、同時に「投げ釣り」や「投影」を意味するということが面白いな、と思った。
ロンドンの鋳造所では、最も原始的な鋳造法のひとつである「砂型鋳造 (sand casting)」という方法で、架空のロゼッタストーンのような彫刻作品を作った。まずは石膏でまっさらな石盤をたくさん作り、その表面には、ヒエログリフの代わりに、風で揺れている木漏れ日のカタチの残像からとったドローイングを彫り入れた。それを今度は粒子の細かい砂に埋めて打ち固め、パカッと外してネガとポジの反転された型を作る。(この時点で石膏はもういらないので、割って砕いて、再利用に回す。)こうして作った型に熱で溶かしたアルミニウムを流し込み、一晩冷やせば、最終的に木漏れ日の記号が刻まれた銀色の文字盤ができ上がっている。
この鋳造という工程は、僕のあらゆるドローイング制作の核心にあるプロセス、つまり「見ること」と「描かれたもの」との間で起こっていることを、実際に再認識させてくれるものだった。つまり、もともとあった物質や記憶が消えて、それらの痕跡としての新しい物質や記憶が生まれるまでに、様々なレベルでのネガポジ反転現象が起こっている。そもそも反転というのは、約 3 万 5 千年前の旧石器人がショーヴェ洞窟に施した手形(ネガティヴハンド)に始まって、19 世紀に生まれた写真術にも通じる、イメージの生成方法としての技術である。これによって現実そのものを「鋳型」として、ネガポジ反転=鋳造されたイメージが現実の隣りに現像される。さらに、こうして生まれたイメージもまた「見られる」ことによって、すでに「描かれたもの」という、もうひとつ別の現実となり、次の鋳造のための型になるわけだ。
こうしてイメージはまた新たなイメージへ、現実は新たな現実へと鋳造され続け、もともとそこにあったものは痕跡を残して忘れ去られ、フィードバックの外へとじわじわ拡張していく。だから鋳造は、エコーを生む技術だと言える。
オノ・ヨーコが「あらゆる線は円の一部」と言っていたが、たしかに現実にある全ての線は細かく見ると震えていたり曲がっていたりして、延長していけばそれらは必ずいびつな円=「島」を形作る。だから全ての線は内と外の空間と時間を分つ境界線であり、波打ち際なのだ。皮膚が体内と体外の波打ち際であるように、現在という瞬間は過去と未来の、波打ち際である。
僕はまず「見ること」によってこの波打ち際をなぞる。そしてそのエッジに立って、見たこともないような魚を目がけて、できるだけ遠くへ釣り針を投げる。魚がかかったその瞬間に、釣り糸は内と外をつなぐ回路となり、やがて内と外が反転する。つまりかつての自分は消えてしまい、今度は魚の方が自分自身になっている。ポジはネガになり、未来は過去になる。あるいはネガはポジになり、過去は未来になる。これを繰り返すことで、エコーが生まれる。
アーサー・ラッセルの音楽アルバム「World of Echo」のように、エコーだけで作られたもうひとつ別の世界を、現実と呼ばれている世界の隣に作りだす。それは常に現実と反転し合いながら、あらゆる境界線や、現在という瞬間を変容させ続ける。
一連のシリーズ "casting" は、博物館などのカタログに印刷された資料写真の切り抜きを用いて、平面の中でこの鋳造というプロセスを象徴的に行うという試みである。

鈴木ヒラク

[作家プロフィール]
小金沢健人 Takehito Koganezawa

1974 年東京都生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。主な個展に「MIMOCA\'S EYE vol.2 小金沢健人展 動物的」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2009 /香川)、「あれとこれのあいだ」神奈川県民ホール
(2008 /神奈川)、「君の頭の中で踊る」資生堂ギャラリー(2004 /東京)、主なグループ展に「ライフがフォームになるときー未来への対話/ブラジル、日本」サンパウロ近代美術館(2008 /サンパウロ)、
「Out of the Ordinary: New Video Art from Japan」MOCA(2007 /ロサンジェルス)、第 2 回横浜トリエンナーレ(2005 /神奈川)など。


鈴木ヒラク Hiraku Suzuki

1978 年仙台生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。主な個展に「Glyphs of the Light」
WINBLEDONspace(2011/ ロ ン ド ン )、「U」island MEDIUM(2011/ 東 京 )、「GENGA & Recent Drawings」ギャラリードゥジュール (2010/ パリ )、「NEW CAVE」トーキョーワンダーサイト渋谷
(2008/ 東京 ) など。主なグループ展に「One And Many」Location One(2012 /ニューヨーク)「六
本木クロッシング 2010 展:芸術は可能か?」森美術館(2010/ 東京)、「愛についての 100 の物語」
金沢 21 世紀美術館(2009/ 石川)など。

オープニングレセプション:2012 年 7 月 28 日 ( 土 )18:00 - 20:00

関連イベント:
ライブパフォーマンス「XXX」at SuperDeluxe
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出演 :
鈴木ヒラク X 植野隆司(テニスコーツ)
永戸鉄也 X カジワラトシオ
小金沢健人 X Jimanica
タイムテーブル :
8:00 - 8:30 鈴木ヒラク X 植野隆司(テニスコーツ)
8:45 - 9:15 永戸鉄也 X カジワラトシオ
9:30 - 10:00 小金沢健人 X Jimanica
10:00~   BAR TIME
-
会場:スーパー・デラックス [03-5412-0515] 東京都港区西麻布 3-1-25 B1F
日時:2012 年 7 月 23 日(月) 19:30 開場 20:00 開演
料金:前売¥2,000(drink 別) 当日 ¥2,500(drink 別) www.superdeluxe.com


全文提供:TALION GALLERY
会期:2012年7月28日(土)~2012年9月1日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:TALION GALLERY
最終更新 2012年 7月 28日
 

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