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渋谷清道 :あなたは、どっち?
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 2月 08日

渋谷清道《ミステリーサークル/6番目の小さな海姫》2007 | 和紙、ミクストメディア | 6000 × 4500 × 9950 mm |(photo: 木奥恵三 courtesy of Tokyo Opera City Art Gallery)

渋谷清道は2004年に六本木クロッシングで作品を発表。その後は2007年に東京オペラシティアートギャラリーでの「メルティング・ポイント」展でジム・ランビーやエルネスト・ネトとともに作品を発表している。その後も幾つか展覧会に出品はしてきているものの、多作な方ではない。つい先日、霞が関の飯野ビルエントランスホールに、トレードマークでもあるスパイログラフをモチーフに光と影によって構成される美しい作品を完成させたばかりである。 スパイログラフと書くととても分かりにくいが、子供の頃、私たちがよく遊んだ道具で、ギザギザの入った円の内側を同じようにギザギザの入った小さな円を鉛筆を使って回して花形の軌跡を描くあの親しみのある道具である。作家はこの私たちが少しノスタルジアさえ感じるモチーフを使い、線を重ね、模様を描く。ここに光が重ねられたり、線が立体的に立ち上がったりすることで素材の面白さが出てくる。また、日本画出身の作家らしく素材や伝統的なモチーフへのこだわりがあり、古典からの引用も興味深い。

なによりも面白いのはその物語性である。「メルティング・ポイント」展では「人魚姫」であったし、飯野ビルでは「12ヶ月の精霊たちが集うかがり火」というタイトルから明らかなようにマルシャークの童話「森は生きている」からの引用であろう。今回の展覧会ではイソップ童話に出てくる「金の斧、銀の斧」を下敷きにして、3つの空間を使ってインスタレーションを展開する。渋谷の作品はそれぞれがひとつの作品であり、物語の登場人物であったり、おとぎ話のような題名が付いていて、それぞれが魅力的な作品であるが、本来、展示そのものが大きな物語のような1つの作品でもある。今回の展覧会もそうした構成をとり、見る人を大きな物語のうねりの中へ誘ってくれるであろう。

アートフロントギャラリー 近藤俊郎

全文提供:アートフロントギャラリー


会期:2012年2月3日(金)~2012年2月19日(日)
時間:11:00~19:00
休日:月曜
会場:アートフロントギャラリー


最終更新 2012年 2月 03日
 

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