戸田祥子:#010 地理に、リズム |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 10月 01日 |
映像をみる人は、それを何かを映し出す窓のようなものと考える場合が多い。映画でもテレビでも、ドキュメンタリーや多くのビデオアート作品でも。だから、自分とは異なる他人の物語や世界の出来事をそこに見出そうとする。 しかし、戸田祥子の作品は、映像が光の束であり、私たちは身体的に反応するのだという現象学的な側面を強調する。
だから、見出すべきものはない代わりに、イメージがつながりをうみだし、ただ動き、リズムを刻む。画面の向こう側は消失し、鑑賞者とスクリーンとが向き合うことになり、その間には物体が差し込まれることで映像はより触知的になる。イメージを眺める自分が意識されるような試みによって、見るという行為を能動的なものにすることは可能なのだろうか。 3331ギャラリーでこのたび紹介する作家は、昨年アーツ千代田3331メインギャラリーにて開催された「ソーシャルダイブー探検する想像ー」展にも参加した戸田祥子。 たとえば飛び立つ鳥、海に浮かぶ小島の稜線、翻るカーテンの襞......日常風景における様々な"ディテール"が重なって見えることがある。ともすると近眼者が眼鏡を外した瞬間、あるいは酩酊状態に逆光を浴びた瞬間、猫が寝転ぶ姿と投げ出されたカーディガンを見間違えることがある。戸田祥子はそうした異なるモノや人、運動を一つのテーブルの上に投げ出し、新しい"結びつき"の力学を引き起こそうとする。 二つの異なった画面が併置され、それぞれのスクリーンの中央に、モチーフとなる"ディテール"が乱暴に切り抜かれている。切り抜かれたスクリーンは全面に押し出され、後方の画面に影を落とす。二つの画面に、それぞれ二つのフレームが生まれ、投影された映像が微妙にズレることで独特のリズムが生まれている。そしてその映像から生まれる運動とサウンド・スケープは、ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイスを彷彿とさせるかのように軽快であり、かつ心地よい。 近年はそうした映像インスタレーションを制作していましたが、地下B108スペースではドローイング作品を展示。3331ギャラリーでの映像作品と合わせてご覧下さい。 戸田祥子 全文提供: 3331 Arts Chiyoda 会期: 2011年9月3日(土)~2011年10月12日(水) |
最終更新 2011年 9月 03日 |