大久保如彌:それはあたかも夢のようにみえる |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 9月 17日 |
大久保如彌は1985 年生まれ、2011 年武蔵野美術大学大学院を修了。2005 年にシェル美術賞展に入選、2007 年にはトーキョーワンダーウォール賞を受賞、その後2008 年の「トーキョーワンダーウォール都庁」での展示及び当ギャラリーでの個展で好評を博し、今年開催されたアートアワードトーキョー丸の内にも入選した注目の作家です。 大久保はかつて自然の中や室内空間の中に人物を配し、装飾的な背景描写にもかかわらず、時代状況を映す少女たちの姿を描いて来ました。それは作家自身の感性とも重なりあい、精神性を表わすものでしたが、次第にそうした表現は薄れ、人物の表情は抽象性を持ちつつあり、解釈を見る者に委ねる作品へと変化しています。 初期作品から布の文様を効果的に使った作品が見られますが、今展では背景として描かれる室内の装飾はより緻密になり、女性が纏う衣装もそうした装飾と呼応するかのように描かれ、人物から得られる精神性は後退し、まるで全てが装飾という名のもとに等価に存在するかのようです。 細密な描写はグラビア雑誌から飛び出したかのようであり、映画のワンシーンを見るようでもあって、人の好みや趣味への傾斜を印象付け、自己への埋没とも先鋭化とも読み取れるかも知れません。そうした意味では世代の持つ状況を象徴的に捉えているとも言え、作家自身が語る自己主張とカモフラージュという装飾に於ける両義性、装うことから生じる自己規定や変革という側面も窺い知ることができます。 人間は常に死に向かう存在ですが、装飾に使われるパターン化した文様や、同一人物と思われる人物の並置は循環、再生、連鎖、回帰、輪廻という言葉を想起させ、とてつもない災害を経験した私たちへのかすかな希望へのメッセージとも受け取れます。 今展では10 点前後の新作を予定しています。改めてご高覧いただき、それぞれの感想をお持ち帰りいただければさいわいです。 前回の個展に引き続き「装飾」の持つ意味や機能について考えながら制作しています。「装飾」を主張すると同時にカモフラージュして隠していくという両義性に興味を持っているのですが、今回は加えて「装飾」の「装」の部分、「装う」という点に注目しました。 大久保如彌 個展 グループ展 全文提供: ギャラリーモモ 会期: 2011年10月22日(土)~2011年11月19日(土) |
最終更新 2011年 10月 22日 |