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東信:AMPG vol.25
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 3月 03日

© Makoto Azuma / Courtesy of Mitsubishi-Jisho ARTIUM

アルティアムでは3年ぶりとなる東信の個展。2年間にわたるプロジェクト「AMPG」の集大成を、東信の故郷である福岡の地で初めて発表します。「AMPG」で発表した24作品から厳選した3作品と、25番目となる最新作を発表予定。また、会期中には、東信が2度のライブ演奏を披露します。20周年を迎えたアルティアムの新たな第一幕にご期待ください。

東信「AMPG vol.25」によせて
AMPG で初めて東信の作品を目にしてから、もうすぐ一年が経つ。以来、毎月の展示替えや方々での作品発表毎に足を運ぶ中で、自然と植物にも関心が及ぶようになった。とかく東の作品として見てきたものも、元を辿れば野に生える植物にほかならない。四季の移ろいとともに変化する植物の生長に目がいくようになり、それは僕の生活に少なくない影響を与えることになった。

そもそも僕は、かねてから植物に特別な関心を抱いていたわけではない。だからよほど有名なものでないかぎり、名前もほとんどわからない。東がAMPG で発表した作品に、《Punk tank garden》という東が好きな花卉だけを使って作った鉢植えをまとめた作品があるが、その時痛感した自分の無知は今でもよく思い出す。けれども名前がわからないから楽しめなかったかというとそんなことはなく、そんなものはおかまいなしに東の作品は僕の心を突いた。名前など、たいした問題ではないのである。だから僕は東の作品を、植物に興味などないという人にこそ見て欲しいと思っている。

東の作品は、松を冷蔵庫で凍らせたり、ダリアを爆竹で爆破させるといった過激なものから、魚の泳ぐ水槽の中に花を活けたり、数種の苔を木の形に象ったFRP に植え付けるといった穏和なものまで様々である。いけばなと呼ぶには抵抗があるし、だからと言って適切な形容が思い浮かぶわけでもないが、特定の形式を持たない東の作品はむしろそれゆえに広く受け入れられてきたのではなかったか。少なくとも僕はそう認識している。

今回東の生まれ故郷である福岡で、AMPG での二年間が集大成される。展覧会では、《式 2》、Botanical Sculpture #1》、《Concrete × Bulb》と、AMPG でそれぞれ2007 年4 月、2008 年2 月、2008 年1 月に発表された作品に最新作を加えた4作品を、4つの会期に分けて展示するという。言うまでもなく、過去に発表された作品であろうとも、今回使われる植物はそれとまったく同じものではありえない。それらは今回の展覧会のために、東が選び、切り取った、一つの生命なのである。その尊さを、日々の生活に持ち帰って欲しいと僕は思う。
(美術評論家 小金沢智)

※全文提供: 三菱地所アルティアム

最終更新 2009年 3月 18日
 

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