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江口寿史・谷口ジロー・松本大洋:ポップアート展
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 9月 13日

画像提供:ギャラリーアンテナ

人気漫画家の江口寿史、谷口ジロー、松本大洋の3人の原画をもとにしたジグレー版画作品の展覧会。ジグレー版画とは、原画をデジタルデータ化し、7色印刷によって原画に忠実な色彩が再現される複製版画である。版画制作を手掛けたのは、日本画家・高山辰雄、東山魁夷等の版画を制作したベテランの摺師・尾崎正志(プリントハウスOM)が担当している。

江口寿史、谷口ジロー、松本大洋の3人は、幅広い世代に人気の漫画家である。なぜ、この3人の漫画家のグループ展なのかはわからないが、江口はイラストレーションの仕事も多く、谷口と松本がバンド・デシネに影響を受けた画風が見られる点で、1枚の絵としての完成度、画力の高さが考えられる。

江口寿史は、連載開始から30周年となった《ストップ!!ひばりくん!》を出品。ロックバンド・銀杏BOYZのアルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』のジャケットに使用された作品も見ることができる。

松本大洋は『鉄コン筋クリート』からイラストレーションとして描き下ろした作品を版画化。アニメ映画『鉄コン筋クリート』(2006)の主題歌として発売されたASIAN KUNG-FU GENERATIONのシングル『或る街の群青』のジャケットに使用された作品などを見ることができる。

谷口ジローはこの3人の中では、一般的な知名度は低いかもしれない。だが、バンド・デシネに影響をうけた洗練された画風で、フランスを中心に海外で人気が高い漫画家である。本年にはフランス政府が芸術文化の創造に貢献した人物に贈る芸術文化勲章シュヴァリエ章を受章している。今展では、夢枕獏原作による『神々の山嶺』、関川夏央原作による『事件屋稼業』のブックジャケットに使用された作品を版画化している。

言うまでもなく江口、谷口、松本の3人の漫画家は、これまでも独特の世界観、技術の高さや描写には定評がある。展覧会名に付されたポップアートという呼称が3人の漫画作品に当てはまるのかは疑問が残るが、漫画ファンならずともアーティストや美術ファンなら楽しめる展覧会である。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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