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伊藤英二郎:自我と記憶と複製について
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2011年 8月 27日

《jeux de cartes(カード遊び)》シリーズより
画像提供:キドプレス
Copyright© Eijiro Ito

    壁に並ぶハガキ大の作品“jeux de cartes(カード遊び)”シリーズには、マンガのようなタッチで描かれた有名人の顔やキャラクター、女の子などが刷られている。その上に重ねられている別紙には、吹き出しの中に記されたフランス語の言葉。言葉と画の関係性から、シニフィアン(言語学上の、「意味しているもの」、「表しているもの」)とシニフィエ(同上、「意味されているもの」、「表されているもの」)の関係を考えたり、両者が別紙に刷られていることから、目の前の両者の繋がりの一時性を思ったりと、様々な思考を呼び起こす作品。
    また、“記憶の連作”シリーズでは、同じモチーフを使いながら位置を変えたり、色彩を変えたりした作品が並ぶ。版画という「複製」を可能にした手法に眼が向く一方、絶えず変化していく陽の光を示しているような色彩を使っているというギャップが興味深い。
    ポップな表の姿に秘められた、「版画」というものを捉えなおそうとする作者の試みに唸らされる展覧会だ。

最終更新 2011年 8月 27日
 

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