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森村泰昌 新作展:絵写真+The KIMONO
編集部ノート
執筆: 結城 なつみ   
公開日: 2011年 8月 23日

森村泰昌 北野恒富・考/壱
(恒富風桃山調アールデコ柄)
2011年 和紙にピエゾグラフ
75×56㎝(ラージサイズ 100×75㎝)
画像提供:高島屋本社美術部
Copyright© morimura yasumasa

絵画や女優、歴史上の人物などに扮したセルフポートレート作品で知られる森村泰昌。今回、高島屋美術部の依頼で創業180周年記念の作品を制作し、現在高島屋新宿店にて展示されている。この制作で作家が題材に選んだのは、日本画だ。大正期の大阪画壇で活躍した美人画家、北野恒富の《婦人図》(1929)である。その理由として、森村自身が大阪生まれであるという「縁」と、「日本画なのに写真みたいな描き方」が挙げられている。《婦人図》は当時、高島屋の着物展示会のポスターとなり、大変な人気を博したという。

ギャラリーの入り口正面に北野恒富の《婦人図》があり、その左手奥の空間に6つのバリエーションのセルフポートレートが展示されている。それぞれ、高島屋の展示会で発表された名作着物や、《婦人図》を始めとした、高島屋と所縁ある絵画に描かれた着物、森村自身がデザインした着物が再現され、作家はそれらを身にまとい、《婦人図》のポーズを決めている。「高島屋」「着物」「大阪」という、シンプルで分かりやすい作品のコンセプトは、鑑賞者をスッキリした気分にさせてくれる。それでいて実際にセルフポートレートを眼前にすると、着物の再現率の高さと森村自身の男性的な体型のギャップに、おかしな違和感を覚える。このおかしさは、森村作品ではお馴染みのものだ。

先述した作家の言葉、「日本画なのに写真みたいな描き方」は、日本近代美人画の特徴のひとつである。日本の近代化によって、西洋画の影響が日本画にも及んでいたため、近世に比べると格段に写実的なものが描かれた。作品制作における森村の美術へのまなざしには、日本美術史の一端がうかがえ、作品の魅力となっている。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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