ヤノベケンジ:アトムスーツ・プロジェクト:大地のアンテナ |
編集部ノート |
執筆: 田中 みずき |
公開日: 2011年 7月 27日 |
1997年から自作の放射線感知服「アトムスーツ」を使って作品を生み続けてきたヤノベケンジの展覧会。口から六人の阿弥陀が現れる姿を象った《空也上人立像》(康勝作、六波羅蜜寺蔵、鎌倉時代)を模したアトムスーツ着用の作家像のインスタレーションや写真、オブジェなどが展示されている。3.11以後の今、改めて向き合いたい展示である。 中でも、作者がアトムスーツを着てチェルノブイリを訪れた際に、現地の人との交流を記した日記調のドローイングが、小作品ながら強く心に訴えかけてくる。ドローイングには、多くの人々が普段通りの生活を営んでいるなか、部外者として訪れたヤノベに現地の人々がどのように接したのか、(チェルノブイリ原発事故の)現状を知っているがゆえに、土地の人々の明るさに同調できない作者のとまどい、部外者としての存在を指摘されたことで生じる自分への問いかけなどが書かれているのだ。現在、私たちは皆、現地の人でもありアトムスーツを着たヤノベでもあるのかも知れない。 作者の行動と思考と合わせて、改めて作品を読み解いていきたくなる展覧会である。 |
最終更新 2015年 10月 31日 |