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小西真奈:Portraits
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 2月 17日

Self-Portrait (at23) 2008, oil on canvas, h.100 × w.100 cm 撮影:渡辺郁弘 copyright(c) Mana KONISHI / Courtesy of ARATANIURANO

本展は、2007年に開催した「どこでもない場所」の個展から2回目の個展開催となります。 小西真奈の描く絵画は実在する場所を不可思議な風景として描くことで知られていますが、今回は昨年より取り組み始めている人物をモティーフにしたポートレイト(=肖像画)の作品を発表します。 この「ポートレイト」のシリーズは、自身や知人など身近な人物を肖像画というアカデミックなスタイルで描いています。これら描かれるポートレイトは、どこか危うい表情をし、何かものいいたげな表情をしています。 小西真奈の絵画は、実際に自身が被写体と現実に対峙することで描きたい強いイメージを見つけ出し、さらに撮影した写真によって二次元の画面に収め、それらを構図に用いて描きます。写真にすることで体感したイメージが俯瞰され、被写体が持っている様々な情報の中から掴み取りたいものだけを選びだすことでよりイメージが明確になり、独創的な世界を描き出します。それは、その現実を体感したときに作家が感じる最後まで忘れないで導かれる魅力的な「なにか」を、一瞬に捉えられた写真によって見つけ出しそれを絵画表現の中にすくい取っていく大切なプロセスとなっています。 例えば、風景のシリーズの場合は、作家自身が魅かれた場所に実際赴くことで感じたイメージが、写真というフィルタを通すことで場所のもつアイデンティティや情感的な観念が排除され、単に作家のイメージする絵画のモティーフとして、より魅惑的な風景に変換されていくのです。 今回のポートレイトシリーズは、親しんでいるからこそ感じ取ることのできる個人の魅力を引き出すことで肖像画として成立させるだけでなく、写真によって写し出されたスタイルやポーズ、そして表情で深層的な人間像へと変換しています。 一見何気なく佇む肖像でありながら、その表情から見える情緒のない、見る側を突き放したような謎めいた眼差しは、風景シリーズとも共通するどこか不安定なイメージを感じさせます。それは特定な人物でありながら、特定ではない作家自身のイメージに移り変わっていくのです。 赤ちゃんや可愛い子供がどこか皮肉な表情や成熟した挑発的な視線をしていたり、日常的な表情なのに喜びともいえない謎の微笑みを浮かべたりと、小西の描く肖像はどこかアンバランスな雰囲気を生み出します。 事実(見えるもの)とその奥底にあるもの(見えないもの)が共存するアンバランスな世界こそ、小西真奈の思い描くこの世の真実であり魅力かもしれません。 今回の試みは、この普遍的な何かを絵画表現によって描き出そうという作家の、新たな可能性への挑戦といえるでしょう。

※全文提供: ARATANIURANO

最終更新 2009年 2月 28日
 

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