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大久保あり:山の夢
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2011年 7月 17日

画像提供:LOOP HOLE
Copyright© Ari Okubo

    山登りの経験が、お有りだろうか。山で観たものは、美しいものだけだったろうか。今回の大久保の展示では、少し怖い、誰かの思い出の中の山登りを体験することが出来る。展示会場に並ぶのは、山登りのウエアを着たマネキンや山の写真、絵画、木の枝など。絵画に描かれた文字を読み、写真を観ながら進むうちに、あたかも大久保の作り出す山登りの物語へと迷いこんだような気持ちになる。青い空と急な斜面の山。そして最後に、会場で売られている作家自作の小説「山の夢」(2005年に「I dreamt.」として書かれたものの改訂版、100部限定、300円)を読むと、山登りにまつわる忌まわしい思い出の世界が現れ、今まで観てきた展示物がガラリと変わって観えてくる。
    展示空間も物語も、作者によって作られた世界でありながら、疑似体験だからこそ感じられる妙な現実感にぞくりとくる展示である。

最終更新 2011年 7月 15日
 

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