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Physical side
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 7月 08日

≪雫の器≫ 鉛筆、KMKケント紙、麻布、パネル
530×530mm(部分)
Copyright© Hiroki Yasutomi

    今展のタイトル「physical side」とは絵画制作における肉体的側面を意味し、鍛錬に積み重ねた技術と集中力によって制作された作品を展覧する試みである。
    寺林武洋は、写実的に描かれた『手』を、安冨洋貴は鉛筆によって水たまりに落ちたビニール傘を光と影のコントラストが美しい雨の情景を描き出す。テンペラによって描く小田志保はハッチングの重なりがノイジーな画面を生成する人物画、小勝負は窓型の構造を持つキャンバスに風刺画風な世界を描く。
    これら所属作家を中心とするグループ展のなかに、柿沼瑞輝の厚く盛られた油絵具の塊、激しい筆のストロークが衝動的、身体的な熱さをとくに感じさせる。洗練された高い技術力が発揮された絵画のなかにあって、柿沼の絵画は稚拙ながらも引き寄せられる魔力がある。このヴァイオレントな熱気こそ、絵画のもう1つのphysical sideであり、近年の絵画に欠けているものかもしれない。

最終更新 2011年 7月 08日
 

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