編集部ノート
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執筆: 平田 剛志
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公開日: 2011年 7月 03日 |
夜の路上でファーストフードを食べる男たち、室内で鍋を囲んで血が滴る肉らしきものを貪る男たち。ゾンビ映画やホラー映画を思わせる情景が強烈な印象を残す「怖い絵」だ。例えるならば、ゴヤの『我が子を喰らうサトゥルヌス』などの作品が想起される。 そして、男たちの顔に目を向けると、みな一様に作家・松本央の顔なのである。つまり、展示されている作品は、すべて松本の自画像でもあるのだ。キリスト教における七つの大罪では罪の1つとして大食(暴食)が挙げられているが、松本が本展で描く光景はまさに暴食の現代に生きる「自画像」である。これまでストイックに自画像をテーマとしてきた松本が過激でシニカル、毒の強い自画像戯画へと変貌したターニングポイントとなる展覧会だろう。 だが、その過激さの裏には、宗教画やオランダ・フランドル絵画の静物画、映画やサブカルチャーなどが「飲み」込まれ、咀嚼されている。描かれたモチーフに恐れ、笑いながら楽しめるエンタテインメント絵画だ。
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最終更新 2011年 7月 08日 |