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イェッペ・ハイン:Kuru Kuru
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 1月 13日

"3-Dimensional Circle"、2007【展示作品】、Rimex Super Mirror、steel、200 x 140 x 140 cm、photo by Drik Pauwels copy right(c) Jeppe HEIN / SCAI THE BATHHOUSE

鏡に映り込む反射で風景を変容させつつ、同時に風景にカモフラージュして馴染み、視覚や空間の感覚を惑わせる鏡で出来た迷路の作品や、傾いたりねじれたり、遊具のような様々な形をしたベンチの作品。噴水の頂に立ち上がる炎を冠した不思議な光景を見せてくれる作品、また、噴水の水柱が迷路状に構成された作品では、立ち入る人の動きをセンサーで感知した水の壁が上下し、観客を中に誘導して噴水の真ん中に閉じこめてしまったりします。 イェッペ・ハインの作品は、ユーモア感覚のある切り口を通して鑑賞者を自然に引き寄せて、コミュニケーションの場をつくり出します。使われる素材や作品の形は非常にシンプルでミニマルですが、視覚や体性感覚、認知のもとになる解釈の体系を刺激して作品との交流を内発させる遊びの豊かさ、深い体験への奥行きがあります。物理的なモノとして作品は存在しますが、鑑賞者が作品と出会うことで引き起こされる身体的、心理的な体験や感覚の抽出、作品やその作品の置かれる空間との豊かな対話の場こそがイェッペ・ハインの作品ともいえるでしょう。 このように鑑賞者が能動的に関わって楽しむことのできるとてもソーシャルなイェッペ・ハインの作品は、各地の美術館での展覧会や国際展で発表されるほか、数多くの大がかりなパブリックアートとしても実現されており、2009年にはデンマーク、AROS美術館での個展と街中でのパブリックアートを組み合わせる壮大なプロジェクトには高い注目を集めています。また一方で、イェッペ・ハインは多くのアーティストによるコミッションワークを集めたアート・バー Karriere をコペンハーゲンに立ち上げ、コミュニケーションについて考察する新たな表現の場として運営しています。 自身の作品の現れ方、つまりは鑑賞者とのコミュニケーションの現れ方の文化による違いが興味深いと話すイェッペ・ハインは今回2回目となるSCAIでの個展にあたって、展覧会名を「Kuru Kuru」と題し、ときに円というかたちに悟りや真理を象徴させる日本の文化に寄せて円形、球形をした作品を選びました。 ネオン、鏡、ステンレスなどの素材でできたそれらの作品と交流することで、私たちの知覚や認知の論理は様々な角度からゆさぶられ、鮮やかな驚きや、何かもどかしい感覚、混乱といったさまざまな体験を楽しめる展覧会となります。また、それは鑑賞者と作品との間に主体と客体という関係性をあらわにしながら、その不確定性をも考えさせられる機会にもなることでしょう。 【イェッペ・ハイン 公開トーク】
イェッペ・ハインによる公開トークを、SCAI THE BATHHOUSEでのオープニングレセプションに先駆けて、同日1月16日(金)16:00から17:00まで、東京藝術大学美術学部中央棟 第1講義室で開催いたします。今回のトークでは、これまでの作品やプロジェクトの紹介を通してイェッペ・ハインがどのような事に関心をもって作品を制作しているのか、今後の展開もあわせてお話する予定です。

※全文提供: SCAI THE BATHHOUSE

最終更新 2009年 1月 16日
 

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