編集部ノート
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執筆: 平田 剛志
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公開日: 2011年 6月 25日 |
これまで黒一色や青一色に見えるミニマルな絵画は数多くあった。だが、それらは色彩を見せるという点では、伝統的な絵画の仕事だろう。 鈴木理恵の初個展で展示される作品もまた、白一色に見える。だが、作品タイトル『麻布の上に、二水石膏』、『シーティングの上に、二水石膏』を見ると、絵画技法の知識がある者ならこれは色を着彩した絵画ではなく、これから色が塗られるはずの下地だということに気づくだろう。 その制作工程は、タイトル通り「麻布の上に、二水石膏(非結晶の石膏)」を塗り重ね、5層ごとに研磨する作業を6回(計30回)繰り返し、最後に目の異なるサンドペーパーで表面を磨くという工程である。その結果、画面はつるつるに磨き上げられ、白く美しい絵画が現れるのである。見る角度によっては、磨き上げられた白い平面が鏡面のように外界を写しだし、画面の変化が楽しめる。 本展で絵画の下地そのものの純度を提示した鈴木。今後、その下地にどんな色が塗られていくのか、期待したい。
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最終更新 2015年 10月 25日 |