山本雄教:し・てん |
編集部ノート |
執筆: 平田 剛志 |
公開日: 2011年 6月 15日 |
水墨画風に竹薮が描かれたように見える竹林図。だが、実は視覚障害者用の点字ブロックが交差するさまを日本画材によって水墨画風に描き出した日本画である。 日本画において点字ブロックをモチーフとしたのは、山本太郎の『白梅点字ブロック図屏風』(2006)が記憶に新しい。だが、モチーフが同じ点字ブロックでも、山本太郎が描くのは、風景としての点字ブロックあり、山本雄教の点字ブロックは竹薮に見立てられた記号としての点字ブロックである。点字ブロックは視覚障害がある人のためのコードであるが、日本画もまた花鳥風月などの規定のコードがある。それらを読み解くことで日本画は成立してきたといえよう。山本雄教は、既存の都市のコードをモチーフに、日本画に新たなコードを取り入れようとしているようだ。 また、山本雄教は支持体に鳥の子紙を用いているが、紙がくしゃくしゃにされて揉み紙にした状態で描いている。そのため、和紙の持つ厚みが凹凸を生み出し、画面に微細な変化を生み出している。この紙の凹凸は点字ブロックの凹凸とも共鳴するが、平面上に立体的な物質感が表れ、見えながらも見えない道へと鑑賞者を絵画へと導く。 モチーフのユニークさと日本画材の研究・理解が新たな「視点」を感じさせる「展示」だ。 |
最終更新 2015年 11月 02日 |