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[Q-CO]実践躬行/じっせんきゅうこう 今自分に出来る事をする
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 6月 04日

はまぐちさくらこ|F20|キャンバスにアクリル
画像提供:FUKUGAN GALLERY
Copyright© Sakurako Hamaguchi

    東日本大震災の発生に対し、被災地に向けた募金・チャリティなどの支援活動が行われている。アート界でもチャリティ展覧会の開催、売上や入場料等の収入を義援金や募金とするギャラリー・美術館の動きが見られる。「いま、アートに何ができるのか」。被害にあった人々を前に何かをしたいという感情から生まれた活動は、緊急時における人道的、人間的な行為として高く評価されるべきだろう。
    だが、たびたび開催される「チャリティ展」の概要を知ると、「展覧会」としての批評性、企画の新しさを求めたい気持ちも残る。そんななか、大阪のFUKUGAN GALLERYで開催されている「[Q-CO] 実践躬行/じっせんきゅうこう 今自分に出来る事をする」展は、ただのチャリティ展でもグループ展でもない企画力がある。本展は、売り上げの一部を東日本大震災へのチャリティとすること、展覧会と原発エネルギーの自主勉強会というのが趣旨であるが、その内容は多彩である。
    展覧会は、3人のセレクターが作家のアトリエを訪れ、隠れた名作をセレクトし特別価格で展示、販売するというものだ。辺口芳典、権田直博、はまぐちさくらこ、mississippiなどひと癖ある作品が並ぶが、セレクターによって選ばれた三者三様の作家・作品のセレクトも興味深い。ほかにライブイベント、原発やエネルギー問題を考える座談会やLovearth Campによる自転車での発電装置とパネル展示、減農薬でリンゴ栽培を行う善積農園のリンゴジュース、リンゴジャムの販売などが行われる。

    「実践躬行」とは、実際に自分自身で行うことを意味する。本展は、展示する作品、リンゴ、自家発電、ライブなどすべてが「今自分に出来る事をする」人々の展覧会なのである。多くのアーティストや美術関係者が経済的成功とはほとんど縁のない日本の美術界において、作品売上の「全額寄付」などのチャリティ活動は、電気を作り出すのと同じように、負担や力強さを必要とするものでもある。震災支援のために特別なことをするのではなく、普段の経済活動、制作・生活のなかで生まれた作品、考えや場を共有することこそ、身の丈にあったチャリティのもう一つのあり方なのかもしれない。

最終更新 2011年 6月 03日
 

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