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バンドウジロウ:比類なきこのマントラ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 6月 01日

画像提供:ソーンツリー ギャラリー
Copyright© Jiro Bando

タイポグラフィ作家、音楽家として活躍する、バンドウジロウの初個展。

展示タイトルは有名な大乗仏典「般若心経」、“これから教えるマントラは比類がないほどすばらしいものなんだ”と期待感を煽る一節から取られています。マントラとは「真言」とも言われ、つまり「呪文」の意。仏教のマントラは「浄化」の意味を持つものが多く、社会全体の「浄化」を意識しています。

バンドウは、これら仏教の教えと、現代的なビジュアル表現である、タイポグラフィ、グラフィック、さらには音楽表現をぶつけることによって、よりブッダの教えに興味を持ってもらいたいと語ります。今回は、様々な仏教の教え中でも、大らかさを持つ「密教」の経典をモチーフに選んでいます。「現代日本人の価値観の根底にもミクスチャーな密教の教えが深く関わっていると思っています」。

バンドウのタイポグラフィのモチーフは、最初「古今東西の聖者・賢者のことば」から始まって、最近は仏典からの引用が多くなっています。

彼にとってタイポグラフィは、「ことばの持っている意味に表情を付けていく行為」といいます。「写経」のような意識が強い、と。「いい言葉を、書くこと(デザインすること)によってまず自分の頭にインプットして、最終的には鑑賞者に伝えたい。仏典などの聖典に書かれている言葉は、それ自体に深い意味があるので、噛みしめながらデザインしています」と言います。

今回の展示で、写経の発展形としての「タイポグラフィ」と、読経の発展形としての「オルタナティブ宗教音楽」により、「自分の思想的な立ち位置を表明しづらい日本の中で、あえて“自分の宗教的スタン スをアピールする行為”を社会批評的なアート表現として提示したい」と語るバンドウ。

現代美術、ミュージシャン&グラフィックデザイナーとしての彼の経験、長年の精神世界や宗教への興味、政治への怒り、などすべてが凝縮した展示となることでしょう。ぜひ、足をお運びください。

【スペシャルライブ】
6月11日(sat) 17:00~ 入場無料
高山龍智(声明・ヴォーカル)+バンドウジロウ(ギター)
▼ロックヴォーカリストの経験も持つ異色の僧侶・高山龍智氏とのコラボレーション。伝統的な声明(しょうみょう)にロック的・民俗音楽的なギターをぶつけたり仏典を現代的に解釈した歌詞をブルースロックに乗せたオリジナル曲などを披露します。

バンドウ ジロウ
タイポグラフィ作家/音楽家
北海道出身。多摩美術大学美術学部彫刻学科卒。
大学卒業と同時にプロミュージシャンとして活動。平行して広告プロダクション勤務などを経てフリーランスのグラフィックデザイナーとしても活動。現在は、「仏教とロックの接点」をテーマに、タイポグラフィと音楽による作品制作・発表活動を展開。

1984年~1990年「カーネーション」にギタリストとして在籍。
2000年~2005年「THE BOOM」のツアーサポートメンバー。
2003年 ソロライブ、美術家とのコラボライブ開始。
2005年 美術家・斎藤ちさとと「創作チーム・geppei」結成。
2007年 岡田裕子企画「レディオ栄町2057」参加。
(「般若心経」をモチーフにした楽曲提供したが、住民からの苦情により放送中止。)
2009年 「古今東西の聖者・賢者のことば」というタイポグラフィ作品シリーズ制作を開始。
2010年 「エントロピーへの反逆展」at SEE MORE GRASS、「仏像展2」at マキイマサルファインアーツ

http://geppei.com/05_bando/jb_index.html

※全文提供: ソーンツリー ギャラリー


会期: 2011年5月31日(火)-2011年6月11日(土)
会場: ソーンツリー ギャラリー

最終更新 2011年 5月 31日
 

編集部ノート    執筆:田中 みずき


画像提供:ソーンツリー ギャラリー
Copyright© Jiro Bando

    デザイン化された文字でしたためられるのは、仏典から引用したらしき言葉。ジーンズやプレートに施された文字は、洒脱な感じでお洒落である。仏典を現代に伝えるとしたら、この文字なのだろうか??と、考えながら見るのも一興だろう。元は絵画的に描かれていたものが記号化されて文字になり、それがまたデザイン化されて視覚を楽しませるものになっている所が輪廻のようで面白い。何故、仏典がテーマなのか、筆でしたためられたものを脱する意味は何か、謎の広がる展覧会である。


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