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宮永愛子:景色のはじまり-金木犀-
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2011年 5月 17日

Copyright© Aiko Miyanaga/Courtesy Mizuma Art Gallery

    圧巻は展覧会表題作の「景色のはじまり」だろう。六万枚の金木犀の葉っぱがつながり、大きな一枚の布のようになっている。これが天井からテントのようにつるされ、鑑賞者は布の下にできた空間に入ることもできる。葉は白色に色が抜かれ、葉脈だけ。秋に咲く、金木犀の芳醇な香りのオレンジの花の記憶と、見逃していた葉っぱの存在、そしてその葉が骨のようになった時間の流れが渾然となって押し寄せてくる。また、たんすの中に葉を詰め込んだ「はじまりの棲みか―地図―」では、作品制作時の音が流れ、目前の葉が朽ちていく長い時間と、制作の瞬間にだけ流れていた過去の音と、観賞している現在という三つの時間が表れてくる。時とともに消えるナフタリンで靴などを象った作品で注目を浴びた宮永の最新作は、視覚だけではなく五感で時を感じさせるものへと変化している。そのほか、ドローイングや焼き物なども展示され、作者の世界が伝わってくる。

最終更新 2011年 5月 17日
 

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