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開館20周年記念展 画家たちの 二十歳の原点
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 12日

図録画像より|画像提供:平塚市美術館

人生においてもっとも多感でナイーヴな十代の最終章、二十歳という象徴的な時期は、多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点にも位置づけられます。この時期、未熟と成熟とが葛藤しつつ、世界との関係の中で客観的な自己の形を作り始めるのです。青木繁、村山槐多や関根正二、佐伯祐三、三岸好太郎、現代では難波田史男、石田徹也のような典型的な夭折の画家はもとより、長い活動に生きた芸術家たちもまた、この時期の作品に創作の核となる初々しくも痛切な感性のほとばしりを見ることができます。

本展覧会では油彩画(一部創作版画)に焦点をしぼり、明治、大正、昭和そして現代までの画家たちの二十歳前後の作品を集め、その創作の原点を探ります。そこにはそれぞれの時代における精神と自我の表れの違いがみられるでしょう。と同時に、時代を超え共通する感性の発露もみられるに違いありません。また、各時代の青春期の作品を一堂にならべることにより、別個に語られ勝ちな近代と現代の美術を同一の地平で考える機会ともなるはずです。さらに、世代の異なる画家たちが青春期に描いた作品群は、その真摯でひたむきな態度によって、現代の若い世代への力強いメッセージとなるはずです。

是非この機会に各時代の画家たちが苦闘し悩みつつも世に残した、清冽な作品の数々をご覧ください。

全文提供: 平塚市美術館


会期: 2011年4月16日(土)-2011年6月12日(日)
会場: 平塚市美術館

最終更新 2011年 4月 16日
 

編集部ノート    執筆:結城 なつみ


図録画像より
画像提供:平塚市美術館

    明治から平成までの、洋画家(一部創作版画家)54人が20歳頃に描いた作品を一堂に集めた展覧会。「二十歳の原点」とは、高野悦子の日記をまとめた書籍のタイトルである。1969年、学生運動のさなかに彼女は20歳で自ら命を絶った。
    この展覧会にも田中恭吉、村山槐多、関根正二ら「夭折の画家」の作品が陳列している。その一方で、熊谷守一や中川一政ら長寿の画家や、野見山暁治、横尾忠則、草間彌生、靉嘔、森村泰昌、大竹伸朗、O JUN、会田誠、山口晃といった現在活躍している画家たちの若描きも展示されていて面白い。作品にはキャプションとともに、画家自身の言葉や回想が添えられている。時代順に展示されており、日本の洋画史を俯瞰するような構成だ。
    それぞれの時代を反映し様式は大きく違うが、通底する「未熟」「孤独」「苦悩」といった若年期独特の響きは、観る者に懐かしさ、もしくは陰鬱な感情を呼び起こすだろう。しかしながら、多くの作品は二十歳そこそことは思えない筆力に満ち、驚かされる。また、後年の作風と大いに異なる画家もいる。若さゆえの意欲、集中力、体力、発想力などにも注目したい。

今後の巡回予定は、下関市立美術館(2011年6月18日~7月31日)、碧南市藤井達吉現代美術館(2011年8月9日~9月19日)、足利市立美術館(2011年9月25日~11月13日)


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