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松本央:Beast Attack
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 16日

Copyright © Hisashi Matsumoto
画像提供:COMBINE

作家コメント
科学技術やITなどのテクノロジーの進歩によって、高度に発展を遂げた情報化社会を築いた現代。我々はその成果として物質的に豊かで快適な生活を送り、個人の権利と自由を手に入れた。だが、それは同時に個人の欲望を解放し、拡大させることにも繋がった。資本主義、市場原理主義にのっとった自由競争による経済発展は、少数の富裕層と多数の貧困層からなる格差社会を生み出した。人々は再び、自然淘汰、適者生存による弱肉強食のサバイバル世界を自らの手で作り出したのだ。我々は、この肥大した経済システムを維持すべく、メディアを通して大量の情報を流し、人々の欲望を刺激し、人々に消費を推奨する。また快適、簡便さを追求した現代社会では人々が欲望を満たすまでの時間も短縮され、肉体的な負荷も少なく手軽に満たすことが可能となった。その進行は都市の発展、日々のテクノロジーの進歩の速度に比例し加速の一途をたどっている。その結果、欲望を満していくことが常態化し、欲望の肥大化とその制御についての感覚が麻痺し、反射的に自らの欲望を満たし続けている。自らの欲望をむき出しにし、それを貪る様は、さながら野獣そのものである。 自己の欲望の無条件の肯定、その行き着く先には一体何が見えるのだろうか。

京都精華大学入学時から、現在までずっと自分をモチーフに絵画制作を続ける松本央が“今取り組む”テーマ【人間の野獣化】。市場原理主義にひた走る世界、欲望の制御を無くし、自己都合に終始し欲望の肥大化に麻痺した現代人の姿を、自分という社会の最小構成単位を通して冷徹に炙り出す彼の表現は、今もっとも注目すべ芸術表現だと私は思います。

松本央(まつもと・ひさし)
1983年 京都生まれ
2007年 京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻 卒業
2009年 京都精華大学大学院芸術研究課博士前期過程洋画専攻 修了
2010年 solo exhibition vol.1『無常の空間ー108人の自画像』BAMI gallery(京都)、solo exhibition vol.2『現(うつつ)の果て』BAMI gallery(京都)、2008年「第62回二紀展」初出品初入選、2010 第14回上海アートフェアー出品 『コンテンポラリーアートの扉』高松天満屋美術画廊(香川)
2011 京都二紀展黒田賞受賞

※全文提供: COMBINE


会期: 2011年6月1日(水)-2011年7月8日(金)
会場: BAMI gallery

最終更新 2011年 6月 01日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


Copyright © Hisashi Matsumoto
画像提供:COMBINE

    夜の路上でファーストフードを食べる男たち、室内で鍋を囲んで血が滴る肉らしきものを貪る男たち。ゾンビ映画やホラー映画を思わせる情景が強烈な印象を残す「怖い絵」だ。例えるならば、ゴヤの『我が子を喰らうサトゥルヌス』などの作品が想起される。
    そして、男たちの顔に目を向けると、みな一様に作家・松本央の顔なのである。つまり、展示されている作品は、すべて松本の自画像でもあるのだ。キリスト教における七つの大罪では罪の1つとして大食(暴食)が挙げられているが、松本が本展で描く光景はまさに暴食の現代に生きる「自画像」である。これまでストイックに自画像をテーマとしてきた松本が過激でシニカル、毒の強い自画像戯画へと変貌したターニングポイントとなる展覧会だろう。
    だが、その過激さの裏には、宗教画やオランダ・フランドル絵画の静物画、映画やサブカルチャーなどが「飲み」込まれ、咀嚼されている。描かれたモチーフに恐れ、笑いながら楽しめるエンタテインメント絵画だ。


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