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玉井健司 展:重力亀
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 10月 25日

<<あんたいとるろけっと>> (2008年) mix media(サイズ可変)  copy right(c) 2008 Taimei Gallery

玉井は常々自然の中で世界を眺め、観察する体験を通して作品を作り出しています。自然とは同じ岩が一つとしてないように、次々と形を変えていく波のように、常に特異で変化するものであり、それは時には美しい景色となって感動を呼び起こし、時には脅威をもって人間に迫り来るものです。岩山に聳え立つフェンス、雪山に突き刺さる剣。これまで玉井は主に写真作品の中で、ただ見る者の前にそっと開示している自然、人為を侵食していく人間を含む自然、そのものを描き出そうとしてきました。風景写真でありながらも特別な機材に頼らない制作方法や、時にはファインダーさえも覗かないまま撮影されるこれらの作品は、作家の表意や感情を伴わない平坦で淡い雰囲気を持つもので、それは自然の内に閉じこもり、自然そのものになろうとする玉井の姿勢そのものの表れです。

しかしながら本展では、昨年より手がけ始めた絵の具を使った作品を発表いたします。表面塗装があらかじめ施され、絵の具の吸い込みがない建築材等をキャンバスに、乗せられた絵の具の物質感が強調され、そのものが意思を持っているかのような画面を作りだします。四方八方に有機的に流れ拡がる絵の具の層は、いつしか玉井自身の意思をも離れ、まさに自然が成す結果として特異な形状を作っていきます。そして画面上にコラージュのようにして追加される直線や鳥などのいくつかの断片的な描写は、それら自然体の絵の具の層に絡め取られるようにして、とどまることなく変容していく世界の中で戸惑い歓喜し、共存していく我々人間の姿や意識を表すような、象徴的な要素として用いられます。また、これらの抽象的な作品は幾重にも組み合わさり、ギャラリー空間全体を覆い尽くすかのようなインスタレーションを展開します。玉井健司にとっては絵画作品による初個展となります。

※全文提供: ZENSHI

最終更新 2008年 11月 18日
 

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