あるべきようわ 三嶋りつ惠展 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 4月 07日 |
三嶋りつ惠は、1989年にベネチアに移住、1996年よりムラーノ島のガラス工房に通い、職人とのコラボレーションにより作品を制作しています。2001年にロンドン・サザビーズよりジョルジオ・アルマーニ賞を受賞。2007年には静岡県長泉町のヴァンジ彫刻庭園美術館で個展を開催、2009年にはベネチア・ビエンナーレに出展し、昨年はオランダのボイマンス・ファン・ブーニンゲン美術館で個展を開くなど、国内外で活躍しています。 ベネチアのガラスは、美しい色や華麗なデザインで何世紀にもわたり人々を魅了してきました。その特徴は、他のガラスと比べて透明度が高いこと、ガラスが柔らかいので熱いうちに手を加えて繊細な細工を行うことができること、また、優れた職人がいることがあげられます。これらの特徴を活かして三嶋の作品は生まれます。ベネチアでは色を使ったガラスが多くみられますが、三嶋はあえて色のない作品をつくります。透明な作品をつくるのは、「風景にとけこみ、光を通して輪郭だけを浮かびあがらせることができるから」。現在ベネチアで、透明ガラスを主に使うアーティストは三嶋だけといわれています。ガラスの可能性を探り、様々な新しい表情をつくりだそうとする三嶋の挑戦は、千年の伝統を持つベネチアのガラス工芸に新鮮な風を吹き込んでいます。 三嶋の制作方法は、最初にデザインしたものをそのままかたちにするのではなく、制作の過程でどんどん変化していきます。職人たちとのやりとりや、素材が変化していく流れに逆らわず、それをうまく利用したうえでかたちができあがります。 作品にみられる有機的なフォルムは、水や樹木などの自然から着想を得ることもありますが、ガラスの素材が炎のなかでオレンジ色のハチミツ状に溶けている状態からアイデアが湧いてくるといいます。また、「場」の空気を感じ、そこからインスピレーションを得て作品のアイデアがでてくることも多いそうです。 展覧会では、これまでの代表作と、銀座の空気を感じて新たにつくられる最新作を合わせた約25点を展示します。 三嶋は、資生堂ギャラリーの回廊のような細く長い階段から、「地下に向かう参道」を思い浮かべました。今回、資生堂ギャラリーは、参道、祭壇、泉などがある、神殿をイメージした空間になります。展示設計に建築家の青木淳氏を迎え、銀座につくられた静謐な場に、三嶋のガラス作品を展示します。 展覧会タイトルである「あるべきようわ」(阿留辺幾夜宇和)は、鎌倉時代初期の高僧、明恵の座右の銘だったといわれています。その意味は「あるがまま」や、「あるべきように生きる」ということではなく、時により事により、その時その場において「あるべきようは何か」と問いかけ、その答えを生きようとすること。*三嶋が日々「かたちはどこから生まれるのか、どこにあるのか」という問いかけを自分自身に行い、創造していることに通じることから、今回の展覧会のタイトルに選びました。 空間全体を演出してガラス作品を展示する、三嶋りつ惠の世界をどうぞお楽しみください。 * 河合隼雄『明恵 夢を生きる』講談社文庫、1995 年10 月、p.253 三嶋りつ惠(みしまりつえ) 主なパブリック・コレクション: ギャラリートーク ※全文提供: 資生堂ギャラリー 会期: 2011年4月12日(火)-2011年6月19日(日) |
最終更新 2011年 4月 12日 |