1983年10月、東京都・港区に1933（昭和8）年に朝香宮邸として建てられた建物を美術館として開館。アール・デコ様式をほぼ完全な形で伝える数少ない建物であり、東京都の有形文化財にも指定されている。展覧会は企画展を中心に朝香宮邸が建てられた1920～30年代から近現代の美術・デザイン・工芸などを中心に企画展を年3～4回開催している。

     アール・デコ様式とは、1920年代から1930年代にかけてヨーロッパの装飾美術を席巻した美術・デザイン様式の1つである。東京都庭園美術館では、内部装飾をフランスの画家、インテリア・デザイナーのアンリ・ラパン、彫刻家のイヴォン＝レオン・ブランショ、正面玄関に設置されている女神像のガラスレリーフや大広間のシャンデリアを宝飾デザイナー、ガラス工芸家のルネ・ラリックらが手掛けている。基本設計と内装の一部は、宮内省内匠寮が担当し、アール・デコ様式に日本の美的感性が付加され、日本におけるアール・デコ様式の受容という面でも興味深い。館内は1階の大広間、大客室、大食堂、2階の客室、私室などが展示室として公開され、独創的で美しいデザインによって往時の雰囲気に浸ることができる。
     東京都庭園美術館は本来が住居として建てられたこともあり、ホワイトキューブの展示室を有する美術館とは異なり、建物自体が美術品であり、作品と観賞空間との間に交感が生まれる新しい美術空間を実現している。
     美術館の外へ出ると、都心の中でも珍しい広大な緑溢れる庭園が広がっている。芝生広場、日本庭園、西洋庭園の3つのエリアに分かれた庭園が公開されており、野外設置の彫刻作品を見ながら四季折々の自然の表情を楽しむことができる。庭園内では安田侃、エドゥアール・サンドらの彫刻作品を見ることができる。自然と建物と美術作品をあわせて楽しめる環境は、庭園美術館ならではロケーションである。
     なお、東京都庭園美術館では展覧会ごとにユニークなドレスコード割引を設けている。展覧会にちなんだ服装やアクセサリーを身に着けていくと入館料が割引となるものである。装いも展覧会に合わせてみると、東京都庭園美術館だけでなく訪れる私たちもまたその空間に溶け込めるかもしれない。そう、美術鑑賞は家を出るときから始まっているのである。

所在地：　東京都港区白金台5-21-9
電話：　03-3443-0201
開館：　10:00 - 18:00（入館 -17:30）毎月第2・4水曜休館（祝祭日の場合は開館、翌日休館）
ウェブサイト：　http://www.teien-art-museum.ne.jp