| EN |

上須元徳:RE: Assemble
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 2月 11日

《Cycad》2010年[当展出品作品]
アクリル・キャンバス|112.1×162.1 cm
画像提供:YOD Gallery|Copyright © Motonori Uwasu

大阪芸術大学で絵画を専攻した上須は、一貫して現実の風景を題材としたリアリズム絵画に取り組んできました。実際にある町並みや建造物を中心に描いてきた作品には、通常のリアリズム絵画とは異なった手法とコンセプトが表現されています。上須は、風景を単に写実的に描くのではなく、題材のそれぞれの部分を統合し、単一の色面に置き換えることを一貫してきました。私たちが眼にしている世界は、実存する物体の細密なかたちが本質であるという一般的な理解の上に成り立っていますが、人間の視覚は意識による判別によって、現実世界の見え方は人それぞれに異なります。色彩やかたちの知覚の差異から細部の認識の強弱など、視覚も他の感覚と同じく千差万別なものなのです。彼はそこに着眼点を置き、視覚の普遍的な部分を抽出し、そこから現れてくる違和感を、色面で構築された風景画の中であぶりだしているのです。

上須自身にとっても2年ぶりの個展となる当展は、これまでのスタイルから新たな展開を多数織り込んだ内容となります。今まで題材に残していた特定される要素が、彼の作品の中から姿を消します。街の看板やかたちそのままにランドマークの建造物を描くことにより固有性・地域性を意識していたのが、そうした要素が姿を消すことにより、題材自体に普遍性が浸透していくことになります。本来、描かれる一つ一つの題材には固有のアイデンティティが存在しますが、彼の主たる解釈手法である視覚の普遍性が強まることにより、題材自体の固有性が解体されて、普遍性が付加されていきます。当展の新作におけるサブジェクトには、多数の細かなパーツで構成された集合体が題材として描かれています。そこには上須が強調する解体と再構築のイメージを、自ら描く行為の下に追い求め、時間や空間というものを超越したところにある価値、すなわち万人が共有できる普遍的な価値の存在を提示するものなのです。

当展のタイトル"RE: Assemble"には、彼が描くことと同等である現実の再構築という行為の中に二項対立の構図を数多く作り出している意味も込められています。過去と現在、他者と自分、そして固有性と普遍性も、全て最初に提示される現実を自らにフィードバックすることで生成される概念です。その中で解体と構築を繰り返すことによって、改めて私たちが何気なく触れている現実に対しての問題提起をおこない、そこで見いだされた違和感の解釈を通じて、終わることのない普遍性の追求がなされていく。それが、彼の描く世界観そのものであることに私たちは気づかされるはずです。

上須 元徳(Motonori Uwasu)
1975 大阪に生まれる
1999 大阪芸術大学 芸術学部美術学科卒業

主な個展
2006 GALLERY wks.(大阪)
2007 space gallery roundish(大阪)
2009 GALLERY wks.

主なグループ展
2006 頭の水槽(GALLERY wks., 大阪)
2007 YOUNG JAPANESE LANDSCAPE(Museum of Young Art, ウィーン, オーストリア) 
2009 画廊の視点 gallerism(大阪府立現代美術センター)
ART SPACE ZERO-ONE オープニング展(ART SPACE ZERO-ONE, 大阪)
2010 OSAKA ART NOW(ヒルサイドテラス, 東京)
art gwangju(KDJ Convention Center, 光州, 韓国)

※全文提供: YOD Gallery


会期: 2011年3月1日(火)-2011年3月26日(土)
会場: YOD Gallery
オープニング・レセプション: 2011年3月5日(土)17:00 -

最終更新 2011年 3月 01日
 

関連情報


| EN |