| EN |

冨井大裕:色と形を並べる
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 2月 01日

《wrap (color sample) #1》2008年
ビニールテープ、針金|0.6x17x0.6cm
画像提供:レントゲンヴェルケ

都内コマーシャルギャラリーでは初となる冨井大裕の個展。

冨井大裕は2000年代初めより、主に日用品を用いて 立体作品を制作し続けています。こ れまでの制作に一貫して、冨井は素材としてのものに固有の色と形を本来ものが持つ能力と捉え、その能力に逆らうことなく扱うことに よって様々な形状の立体作品へと昇華させています。

冨井にとって非常に重要なことは、素材として選ばれた 日用品があたかも彼が初めて目にし た対象であるかのように、等しく同じ価値を持たせるという過程です。こうして本来の価値や用途から完全に解放されたそれらの日用品 は、水平または垂直に重ねる / 並べるという作家のシンプルな行為により、新たなあるべき色と形を備えた造形作品へと生まれ変わります。

『色と形を並べる』と題された本展覧会は、これまでの 冨井作品の柱となるコンセプトを再 考し、その最も根源的な部分を顕在化する試みです。それは作家本人の言葉を借りれば、我々が日々目にしている世界の成り立ちを見つめ 直すことでもあると言えましょう。

今展覧会では、スクエア型タイルカーペットを積層状に した新作を中心に、水平/垂直/色 という要素にフォーカスした彫刻作品を展 開いたします。是非ともご高覧下さい。

色と形は、それ自体に実体がない。色も形も必ず なにかしら現実のものに付属してい るのであり、我々はものを見る時、色と形がものと分かち難く結びついた姿を見ている。
つまり、2つのものを並べた時、それはすでに複 数の色と形を組み合わせたことにな り、造形をしたといえる。
(中略)
私の制作とは、この日々の造形行為を顕在化させ 続けることによって、造形の価値を 問い続けることである。

- 冨井大裕

冨井大裕
冨井大裕は1973年新潟県生まれ、東京都在住。 1999年に武蔵野美術大学大学院造形 研究科彫刻コース修了後は、主に国内を中心に数多くの展覧会に参加してきました。過去の主な個展に『STACK』 (2010年 / NADiff a/p/a/r/t, 東京)、『つくるために必要なこと』 (2010年 / 金沢美術工芸大学アートギャラリー, 金沢)、主なグループ展に『ニュー・ヴィジョン・サイタマ3』(2007年 / 埼玉県立近代美術館、埼玉)、『気象と終身 - 寝違えの設置、麻痺による交通』 (2010年 / アサヒアートスクエア、東京)などがあります。また冨井は2011年2月26日 - 5月8日の間、東京都現代美術館にて開催の『MOT アニュアル2011 Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 への出展作家のひとりに選出されました。2011年2月末には、"Motohiro TOMII : Works 2006 - 2010" と題された、これまでの主要な作品を掲載した作品集を発売の予定です。

※全文提供: レントゲンヴェルケ


会期: 2011年3月4日(金)-2011年3月26日(土)
会場: ラディウム - レントゲンヴェルケ
オープニングレセプション: 2011年3月4日(金)18:00 - 20:00

最終更新 2011年 3月 04日
 

編集部ノート    執筆:田中 みずき


《wrap (color sample) #1》2008年
ビニールテープ、針金|0.6x17x0.6cm
画像提供:レントゲンヴェルケ

マルセル・デュシャンが展示した便器を初めて観た観客のように、「?」と頭上に浮かべながら観たい展示。会場に並ぶのは、色とりどりのビニールテープやクランプ、ポスター、カーペットなどの物品である。奇麗に一直線に並べたり、二個体を組み合わせたり、筒状に丸めたりされた物品たちは、道具箱の中で観るそれらとは違って見える。

何故、物品が作品として並んでいるのかという問いの後に来るのは、私達は物品の色を見たことがあっただろうか?、物品の形をしっかり捉えたことがあっただろうか?、など、自分の物の見方に対する問いかもしれない。幾つかのクランプの、ものを挟むネジが宙で舞うように違う向きを指して止まり、本体の互いががっちりと組まれる様が美しいなんて、誰が知っていただろうか?


関連情報


| EN |