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中野渡尉隆:パイドロス
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 1月 15日

《Super B to the Future Project PHAEDRUS》1994年
全後進駆動に改造されたオートバイ、シルクスクリーン
100x300x120cm
画像提供:レントゲンヴェルケ

この展覧会では1994年に直島ベネッセハウスにおけるグループ展「アウト・オブ・バウンズ」のために製作された、逆走するドラッグレーサー 「パイドロス」一点のみが展示されます。

中野渡の代表作であるこの作品は、前述の展覧会後も、「メソッズ・オブ・ダンス」(レントゲン藝術研究所、1995)、「フィロテッ ク」(PIO、1996)「ヒニクなファンタジー」(宮城県立美術館、1996)等、様々な展覧会に出展され、90年代中盤の日本現代美術を 象徴する作品として良く知られていました。

その後永きに亘り倉庫で眠っていましたが、2011年、実に15年振りに日の目を見る機会を作る事が出来ました。 今世紀の日本現代美術には見られなくなった重厚な疾走感、是非ご期待下さい。

「パイドロス」について
70年代、アメリカのヒッピー達のバイブルになった本がある。それはビートニク世代のバイブルだったジャック・ケルアックの「路上にて」を受 け継ぐもので、その本の名は「禅とオートバイ修理技術」と言う。

その本の書き出しは古代ギリシア人の時間論で始まっている。古代ギリシア人の考えでは過去は我々の前にあり、未来は我々の後にあるという説 だ。これは一理ある。確かに我々にとって過去は見えるが、未来は見えないからだ。

ところで、オートバイ狂の中野渡は、スピードが速まるほど、人間の視界は狭まることを体験的に理解した。となると、疾走する現代というのは、 ますます視野が狭まり、方向が見えなくなってきているのではないだろうか。

そこで彼の作品は逆走するオートバイとして提案された。このオートバイの心臓はハーレー・ダヴィッドソン、車体はドラッグレース用のカスタム メイドだ。但し、ギアをひとつ余計につけてあるおかげで、このオートバイは後にしか走らないのである。

現代社会の批判的注釈を、現代の機械文明の象徴のような精緻に組上げられたオートバイで表現するということは、それ自体、興味深い皮肉となり うるだろう。 中心を喪失し、未来へのヴィジョンを失って疾走するポストモダンな現代社会を、逆走するオートバイが痛烈に批判する。
(アウト・オブ・バウンズ展カタログより抜粋)

※全文提供: レントゲンヴェルケ


会期: 2011年2月4日(金)-2011年2月26日(土)
会場: ラディウム - レントゲンヴェルケ

最終更新 2011年 2月 04日
 

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