大畑祐子:時を泳ぐ |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 1月 06日 |
大畑は,人物の顔の表情をあまり撮らない。彼女の写真の人物は,たいていシルエットや後ろ姿である。被写体たちが,人待ち顔をしているのか待ちくたびれたのか,なにかを楽しみにしているのか諦めたのかは,写真を見る者の想像に任されている。だから,彼女の作品は,見る者を反対方向からの視線に誘う。そのことは,見る者の心を映すだろう。 今回の大畑のテーマは「水」である。水は,それ自体が物質であると同時に,鏡の役割を果たし,なおかつ水中に潜むものたちの姿を垣間見せる。一見すると,「明鏡止水」という言葉を思い出しそうな無人のプールの水面には,窓の外の風景や屋内の天井が見える。見下げると上にあるものが見えるという点で,今回の彼女の作品もまた,見る者を逆向きの視線に誘っている。わたしたちがこれらの作品を見て,上空の雲や天井の飾り旗のことを想像するとき,「水」は心のメタファーと化すのではないだろうか。もしそうならば,水を泳ぐ鯉は,心をどのように操るのだろう。 作品の基調色である青色は,作品の被写体が,もともとそこにあったというより,まるで写真家と共鳴しあってひとつの光景を生み出したかのような印象をもたらす。大畑は,「きれいな音がするとき,私はシャッターを切っている」と言う。どうやら彼女は,視覚ではなく聴覚で被写体に呼びかけられているらしい。その音を想像することも,見る者に任ねられている。 大畑祐子 個展 主なグループ展 ※全文提供: スタンディングパインキューブ 会期: 2011年1月8日(土)-2011年2月6日(日) |
最終更新 2011年 1月 08日 |