加賀城健:transFLAT |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 12月 17日 |
約2年ぶりとなる加賀城 健 (Ken Kagajo, b.1974) の個展。 これまで加賀城は、自らの身体動作と感覚をモノトーンの線や帯の集積として平面に表現する「脱色」のシリーズと、一昨年の個展から発表した鮮やかな多色の染料を滴り落とし、偶然的に発生する色の融合と衝突を操る「染色」のシリーズを駆使して、大胆なかたちや色彩を生み出す抽象表現を展開してきました。彼はそれらを一般的な絵画とは異なる手法で表現し、絵画の最も権威といえるキャンバス画に対抗しうる作品を作り出すべく、意欲的に活動を続けております。 今年2010年に、加賀城は新たな展開となる「Veil」シリーズを発表しました。「Veil」シリーズは、脱色・染色で表現した布上にバインダーと呼ばれる液体樹脂で描く行為が特徴となるものです。3次元の世界を表現するために2次元の支持体の上で描くことが前提である絵画表現に、本質的な問題定義を新たに投げかけたものと言えます。近年、「絵画の平面性」の問題を説いた代表的なものとして、村上隆が提唱した「スーパーフラット」があります。江戸期の浮世絵から現代のマンガ・アニメに至る日本文化に連綿と続く表現において、描くモチーフの表現における非立体感こそ日本的表現の典型であると、西洋起源の遠近法の否定を提示したものです。一方で加賀城は、自らの染色・脱色を駆使した表現を、いわば画面の表面上に凹凸を生み出さないことによる、物質的な観点での完全な2次元の絵画表現を成立させるものとして位置づけています。村上の主題とはまた別の視点での「絵画の平面性」へのアプローチと言えますが、コラージュや絵具の盛り上げなどによって絵画そのものが物質的にも3次元に歩み寄ることに対して、これまでの彼の表現は彼が施す行為によって視覚的に変化を生じますが、物質的に変化することの無い2次元の絵画であることに固執したものなのです。それから次の展開となる「Veil」シリーズは、すでに表現が作り上げられた布上に加筆することで生じる2次元性の矛盾を通じて、見落とされてきた「絵画の平面性」の新たな概念を追求しているのです。 当展では、「FLAT」をテーマにインスタレーションとタブロー作品を混合させたギャラリー空間へと作り上げていきます。「Veil」シリーズをメインとした作品構成にて、単なる物質的2次元の絵画表現への追求から逸脱し、その新たな表現から浮き彫りになる「絵画の平面性」の問題を、空間全体で再構築し提唱する内容となっております。また彼の真骨頂でもあるインスタレーションの要素では新たな試みも提示し、彼の身体性から生まれる造形力のみに留まらない、美術における本質的な概念の中にある絵画に対する疑問を、この場にさらけ出していくことでしょう。 すでに描ききり成立したはずの作品の平面上に、再び平面を作り出す行為。この矛盾していると思われるはずの行為の中に、これまで私たちが固定概念としてあった「絵画の平面性」の問題を、加賀城の作品を通じて改めて考える事ができればと思っております。 加賀城 健(Ken Kagajo) 主な個展 主なグループ展 ※全文提供: YOD Gallery 会期: 2011年1月15日(土)-2011年2月12日(土) |
最終更新 2011年 1月 15日 |
染織による色彩の滲み、ぼかしを用いて、抽象的でエキセントリックかつサイケデリックな絵画を制作してきた加賀城健の2年ぶりの個展。本展では新たな試みとして、染色・脱色した布の上にバインダーと呼ばれる液体樹脂でドットを描き、ワッペンを貼るなどの試みをしている。中でも《surfsup》《王国》の大作2点を組み合わせた展示は、地の色彩層と図のドット層が重なり合い、さながら3D映像のような奥行きとレイヤー構造で鑑賞者を「transFLAT」な世界へと誘う。
また、ギャラリーの壁面には糊を用いたウォールドローイングを施し、絵画空間と展示空間が交差・混色し合うインスタレーション空間を作り上げている。
木々や植物に色彩が少ない冬の街並みに、加賀城の作り出す空間は多様な色彩に溢れている。春を先取りするような色彩の温度を体感してほしい。