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日本の新進作家展vol.9 [かがやきの瞬間]:ニュー・スナップショット
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 12月 01日

中村ハルコ 「光の音」より 1993~98 年
(c)Estate of Nakamura Haruko Courtesy Tomio Koyama Gallery,Tokyo/ Formarle la Luce,Tokyo

東京都写真美術館では、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘し、新しい創造活動の展開の場となるよう、平成14年より「日本の新進作家展」を開催しています。9回目となる今年度は、スナップショットをテーマに取り上げます。

スナップショットは、その起源以来人々のあらゆる生活の場面を捉えてきましたが、本展では、楽しさ、幸せ、喜びの瞬間など、明るい側面に注目し、現代の写真表現に新たな可能性を見出す、若手作家や才能のある作家6人を紹介します。

20 世紀前半、カメラの小型化にともない、スナップショットはアマチュアカメラマンの間に広く普及しました。アンリ・カルティエ=ブレッソンをはじめ多くのプロ写真家たちにも最も身近でポピュラーな撮影スタイルとなり、それは現代の若い世代にも脈々と受け継がれています。近年ではカメラのデジタル化や携帯化に伴い、誰もが写真を撮り、それを発表する場も飛躍的に増えています。

きらりと光る「かがやきの瞬間」を捉えたスナップショットを通して、未来の写真表現の動向と可能性を探り、人々を楽しくワクワクさせる写真の力を再確認してみてはいかがでしょうか。同時開催の「スナップショットの魅力」展とあわせてお楽しみください。

【出品作家】
池田 宏彦 Ikeda Hirohiko (1971-)
「偶然の出会いとスナップショットはどこか似ている」と池田はいう。イスラエルのネゲヴ砂漠の撮影も、偶然がもたらした産物だった。キブツのセロテープ工場で知り合った仲間や工場にあった大量のアルコール、砂漠に転がる動物の骨などはすべて、必要な被写体の材料となり、それはまるで、未知なる力にお膳立されているみたいだった。「at negev」(1998年、キヤノン写真新世紀の優秀賞受賞作品)を2010年ヴァージョンとして生まれ変わった「オーレオン」ほか、2002年にイスラエルで撮影されたイメージを重ね、つなぎ合わせた動画によって「スナップショット」の「目の前の今この一瞬」とは何かを探る。
1971 東京生まれ
1995 明治学院大学社会学部社会学科卒業
1996-1997 中東を旅行
2001-2002 中東を旅行
2010 フリーランスカメラマンとして活動中

小畑 雄嗣 Obata Yuji (1962- )
「冬は学校のグランドに水をまいて凍らせ、夜中にスケートをする」という話を、北海道中標津出身の知人から聞いた瞬間に浮かんだ光景。それは、実際に訪れてみると、小畑がイメージしたものと同じだった。別海スピードスケート少年団が猛スピードで氷上を駆け抜けるシルエットや、降雪のなかで流れるように鬣を揺らしながら走る競走馬、人ひとりいない極寒の夜の街など、残像のように脳裏に焼きつくシーンのなかで、撮影方法を試行錯誤しながら見つけた降り落ちる雪の結晶は、ひときわ光っている。1987年、第24回太陽賞、2008年には、「二月 Wintertale」に対して東川賞特別賞を受賞。
1962 神奈川県藤沢市生まれ
1985 日本大学芸術学部写真学科修了

白井 里実 Shirai Satomi (1972- )
ニューヨークに在住し、異文化に順応しようと変わっていく心理や感覚をテーマに、自分が経験している現実の生活に重ねて「ホーム・アンド・ホーム-ニューヨーク・イン・マイ・ライフ」を制作する。セッティングによって被写体をコントロールするステージ・フォトのスタイルを取っているが、そのなかに人物や光、風の動きなど、瞬間やスポンテニアス(自然発生的)な要素を意識的に取りいれている。ニューヨークのICPでスカラシップ・アワード(2007年)を受賞するほか、ロンドン(08年)やワシントンDC(09-10年)のナショナル・ポートレート・ギャラリーで展示される。
1972 東京生まれ
1996 武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科修了
2007 インターナショナル・センター・オブ・フォトグラフィ1年プログラム
2007- ニューヨーク市立ハンター・カレッジ芸術学部 大学院修士課程在籍中

中村 ハルコ Nakamura Haruko (1962-2005)
魅力的で心惹かれる対象をつねに追い求めた中村が、ついに出会ったのは、イタリア、トスカーナ地方に住むイヴォとイルダ夫妻だった。目の前にひろがる美しい風景と、素朴でのんびりした彼らの生活。彼女はそこに、永遠の光を見、「光の音」を聞いたのかもしれない。ヴィヴィッドなカラー作品の配列のなかに時折現れるモノトーンのイメージが、フラッシュバックするように、意識を現実と夢の世界に行き来させる。2000年には、自らの出産を撮った「海からの贈り物」で写真新世紀の年間グランプリを受賞。43歳で夭逝するが、近年、注目を集めはじめ、遺された作品の公開が待たれる。
1962 埼玉県生まれ
1985 日本大学芸術学部写真学科修了
2005 膵臓ガンのためこの世を去る

山城 知佳子 Yamashiro Chikako (1976- )
沖縄を拠点に、映像、パフォーマンス、写真表現を展開する美術家として、活動をつづける山城。本展では、写真表現における「スナップショット」について、写真家たちがこだわり続けてきた「決定的瞬間」と動画における静止画、連写における一コマについて、スティル写真と映像のインスタレーションによって問題提起する。前回の映像作品「沈む声、赤い息」から流れるテーマに繋ぎ、現在、沖縄の森をロケーションに制作中。2008年「沖縄・プリズム 1872-2008」(東京国立近代美術館)、2009年「アトミックサンシャインの中へ in 沖縄」(沖縄県立博物館・美術館・佐喜眞美術館)、「第2回恵比寿映像祭 歌をさがして」(東京都写真美術館)に出品。

1976 沖縄県生まれ
1999 沖縄県立芸術大学美術学科絵画専攻卒業
2000 イギリス、サリー州立アート&デザイン大学大学院交換留学
2002 沖縄県立芸術大学大学院環境造形専攻修了

結城 臣雄 Yuki Shigeo (1945- )
2000年頃から、東京の街をデジタルカメラで撮影したスナップショットは現在まで、7万点を超える。かつてないほどに変貌を遂げる東京という都市に惹かれる理由は何なのか、東京に網の目のように広がる川の撮影を手掛かりに、解き明かそうとした「東京水景」をはじめ、変わる東京・変わらない東京をリアルタイムな視点で捉えた「都市の襞」「東京ノスタルジア」など、デジタル出力の自家版写真集を制作する。それらすべて未公開作品の一部を、インクジェット・プリントと、「無名の街」として構成したスライド・ショーで紹介。1967 年から、CM演出家として活躍。世界最高峰の広告賞のひとつ、クリオ賞などを受賞。
1945年宮城県生まれ
1967年千葉大学工学部工業意匠学科卒。
1967年日本天然色映画企画演出部入社、1974年退社。
以降フリーランスのCM演出家として現在に至る。
1982年東京アートディレクターズクラブ会員、2000年退会

※全文提供: 東京都写真美術館


会期: 2010年12月11日(土)- 2011年2月6日(日)

最終更新 2010年 12月 11日
 

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