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中平卓馬:Documentary
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 29日

2005, type C print, 90x60cm
画像提供:シュウゴアーツ|Copyright © Takuma NAKAHIRA

中平卓馬にとって、あるがままの世界をあるがままに捉えるということは大きな命題です。あるがままの世界とは、ある事物に対するイメージ(それが何であるかなど)を全く持たない白紙の状態でその物を凝視し、その果てでようやく事物が答える、そのことをもってその物が真の姿を現すのだと中平は考えました。写真を撮るということは”私”の知らない未知の世界が偶然にも発してくるサインを待ち構えることなのだと。

中平は度々、飲食店の看板や路上の立て看板をフレームいっぱいに撮影しています。看板とは「本体」を名指しする機能を持つ指示代名詞のようなものですが(「この店は〈友琉館〉です」、「この先に〈森山神社〉があります」など)、中平が写す時、看板はその関係性から切り離され、その形や記された文字の形だけが宙吊りにされ物質としての存在感だけがそこにあるように見えます。かつて中平は下記のように語りました。

私の視線、それに向かって投げ返される事物の視線、その二つのものがせめぎ合う磁場こそ世界そのものであるのだから。
-中平卓馬映像論集”なぜ、植物図鑑か”(晶文社、1973年)より

中平の写真は、あるがままに見ようとしても自らに貼り付いた自我によって決してそうはできないと自覚する中で、それでも徒労ともいうべき毎日の撮影の集積に賭け世界を捉えようとする、その行為に立ち現われるかすかな希望なのではないでしょうか。

展覧会では2004年から2010年までの間に撮影された作品の中から作家が選んだ20数点を展示いたします。下記の通りBLDギャラリーとの同時開催になります。是非この機会に貴メディアにてご紹介いただけますようお願いたします。

中平卓馬は1938年東京生まれ。現在は横浜で活動しています。主な個展に1997年「日常-中平卓馬の現在」 中京大学アートギャラリー(愛知)、2003年「原点復帰-横浜」横浜美術館、2004年「なぜ、他ならぬ人間=動物図鑑か??」 シュウゴアーツ、2007年「なぜ、他ならぬ横浜図鑑か!!」 シュウゴアーツ、主なグループ展に1971年「パリ青年ビエンナーレ」 ヴァンセンヌ植物園(フランス)、1974年「15人の写真家展」 東京国立近代美術館(東京)、2005年「CHIKAKU: Time and Memory in Japan」 クンストハウス・グラーツ(オーストリア)、2008年「ALL OUR EVERYDAYS」 Gallery VER(タイ)など。

主な写真集
1970年『来たるべき言葉のために』
1983年『新たなる凝視』
1989年『アデュー・ア・エックス』
2002年『hysteric six NAKAHIRA Takuma』
2003年『原点復帰―横浜』(展覧会カタログ)
2010年『来たるべき言葉のために』(再刊)

主な評論集
1973年『なぜ、植物図鑑か』
1977年『決闘写真論』(篠山紀信との共著)
2007年『見続ける涯に火が…』

同時開催: 中平卓馬写真展「Documentary」 2011年1月8日(土)-2月13日(日)BLD GALLERY

※全文提供: シュウゴアーツ


会期: 2011年1月8日(土)-2011年2月5日(土)

最終更新 2011年 1月 08日
 

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