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みえないちから
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 10月 28日

志水児王《クライゼンフラスコ》2007年
画像提供:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

ドイツのアニメーション作家であり、音楽映画の名作として知られるウォルト・ディズニーのアニメーション作品《ファンタジア》(1940)の制作初期の段階に協力したオスカー・フィッシンガー(1900-67)は、「すべてのものに精霊が宿っている」と言い、その精霊を解き放つためには「そのものを響かせればよい」と言いました。この言葉は、アニメーションの語源が「アニマ(生命を吹き込むこと)」であることを想起させるとも言えますが、それ以上に、あらゆる物質がその中にエネルギーを宿しているということをほのめかす言葉だと言えるでしょう。

アメリカの作曲家ジョン・ケージは、このフィッシンガーの言葉にインスピレーションを得て以来、物質の中に宿る音を探求し、見えないものや聴こえないものの中から音を引き出そうと試みます。それはある「もの」を叩くことによってではなく、「もの」に内在するエネルギーを聴こうとすることへと深化していきました。音や光といったものは振動現象の一種であることはよく知られていますが、わたしたちは、たとえば人間どうしの関係性の中からも、わたしたちの知覚を超え、物理的な振動としては知覚しえない、エネルギーの交感のようなものを感じとることもあります。

この展覧会では、そのようなさまざまなエネルギーや現象としての振動をめぐる多様に解釈されうる「みえないちから」を表現する作品を紹介します。

出展作家
エキソニモ
1996年結成。千房けん輔と赤岩やえによるアート・ユニットとして、東京とhttp://exonemo.com/を拠点に活動。デジタルとアナログ、ネットワーク世界と実世界を柔軟に横断しながら、テクノロジーとユーザーの関係性を露にし、デジタル・メディアが現代社会へ与えるインパクトについて、ユーモアのある切り口と新しい視点で作品に反映させる実験的なプロジェクトを数多く手がける。2006年《The Road Movie》がアルス・エレクトロニカネット・ヴィジョン部門でゴールデン・ニカ賞を受賞。

小金沢健人
1974年東京生まれ。98年武蔵野美術大学卒業後、99年ポーラ美術振興財団、2001年から文化庁芸 術家在外研修員3年派遣の助成をうけドイツに留学。ドイツ・ベルリンを拠点に、世界各地で作品を制作発表する。「運動と時間」に焦点をあてた作品、音楽の発生を視覚的に現出するインスタレーション、毎日の即興の訓練だとい うドローイングなど多彩な手法を用いて作品を制作する。

志水児王
1966年東京生まれ。東京藝術大学美術学部大学院修了。音響や振動現象などを主な表現素材として、 現象とその知覚、運動と要素の発生、芸術と自然科学との関係など実証論的なアプローチをコンテクストとしながら、自然の要素や側面を多角的に捕えなおす方法論を模索している。1994-2006年、レーベル「WrK」に参加。2008 年度文化庁在外研修制度、Grant of Denmark National Bank(デンマーク)、Statens Værksteder for Kunst og Hådværk / Gammel Dok(コペンハーゲン、デンマーク)、CPH AIR Fabrikken for Kunst og Design などを得て2008年よりコペンハーゲン在住。
http://www5. famille.ne.jp/~jshimizu/

フォルマント兄弟
三輪眞弘(兄)と佐近田展康(弟)という父親違いの異母兄弟によって2000年に結成された作曲・思索のユニット。テクノロジーと芸術の今日的問題を《声》を機軸にしながら哲学的、美学的、音楽的、技術的に探求し、21世紀の《歌》を機械に歌わせることを目指す。“録楽”と名づけた音楽の在り方を考察し、亡きロックスターに日本語で革命歌「インターナショナル」を歌わせる《フレディの墓/インターナショナル》により、2009年アルス・エレクトロニカデジタル・ミュージック部門入賞。
http://formantbros.jp/j/top/top.html

堀尾寛太
1978年広島生まれ。九州芸術工科大学大学院音響設計系修了。電磁石やモーター、マイクロフォンな どを組み合わせた自作装置によるライヴ・パフォーマンスやインスタレーションを各地で行なうほか、展示・デバイス 制作などの活動を展開している。http://kanta.but.jp/

オスカー・フィッシンガー

※全文提供: NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]


会期: 2010年10月30日(土)-2011年2月27日(日)11:00~18:00|月休
入場料: 一般・大学生500円[400円]/高校生以下無料/[]内は15名様以上の団体料金

最終更新 2010年 10月 30日
 

編集部ノート    執筆:田中 みずき


志水児王《クライゼンフラスコ》2007年|画像提供:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

映像作品や、装置のようなインスタレーション作品で占められた展示空間は、実験室のようだ。存在すら知らなかったものが観える面白さや、見えているつもりで観てこなかったものを目の当たりにする体験にわくわくさせられる。美術の知識が無い等と敬遠していると勿体無い。素材やモチーフは、スイッチやほこり、スプーンなど意外に身近なものであったりもするのだ。素朴に実験を楽しむように面白がるも良し、過去の作家の言説などと照らし合わせて「みる」ことを思考するも良し、出品作家たちが生み出した、固定観念を少しずらす装置のちからに乗ってみると、いつもと違う風に世界がみえてくる。


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