みえないちから |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 10月 28日 |
ドイツのアニメーション作家であり、音楽映画の名作として知られるウォルト・ディズニーのアニメーション作品《ファンタジア》(1940)の制作初期の段階に協力したオスカー・フィッシンガー(1900-67)は、「すべてのものに精霊が宿っている」と言い、その精霊を解き放つためには「そのものを響かせればよい」と言いました。この言葉は、アニメーションの語源が「アニマ(生命を吹き込むこと)」であることを想起させるとも言えますが、それ以上に、あらゆる物質がその中にエネルギーを宿しているということをほのめかす言葉だと言えるでしょう。 アメリカの作曲家ジョン・ケージは、このフィッシンガーの言葉にインスピレーションを得て以来、物質の中に宿る音を探求し、見えないものや聴こえないものの中から音を引き出そうと試みます。それはある「もの」を叩くことによってではなく、「もの」に内在するエネルギーを聴こうとすることへと深化していきました。音や光といったものは振動現象の一種であることはよく知られていますが、わたしたちは、たとえば人間どうしの関係性の中からも、わたしたちの知覚を超え、物理的な振動としては知覚しえない、エネルギーの交感のようなものを感じとることもあります。 この展覧会では、そのようなさまざまなエネルギーや現象としての振動をめぐる多様に解釈されうる「みえないちから」を表現する作品を紹介します。 出展作家 オスカー・フィッシンガー ※全文提供: NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 会期: 2010年10月30日(土)-2011年2月27日(日)11:00~18:00|月休 |
最終更新 2010年 10月 30日 |
映像作品や、装置のようなインスタレーション作品で占められた展示空間は、実験室のようだ。存在すら知らなかったものが観える面白さや、見えているつもりで観てこなかったものを目の当たりにする体験にわくわくさせられる。美術の知識が無い等と敬遠していると勿体無い。素材やモチーフは、スイッチやほこり、スプーンなど意外に身近なものであったりもするのだ。素朴に実験を楽しむように面白がるも良し、過去の作家の言説などと照らし合わせて「みる」ことを思考するも良し、出品作家たちが生み出した、固定観念を少しずらす装置のちからに乗ってみると、いつもと違う風に世界がみえてくる。