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谷川千佳:わたしは夢のかけら
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2010年 10月 13日

《剥がれた夢》2010年〈当展出品作品〉
アクリル・キャンバス 53.0×45.5 cm
画像提供:YOD Gallery|Copyright © Chika Tanikawa

2009年、サントリーミュージアム[天保山]にて開催された「アートストリーム2009」においてYOD Gallery賞を受賞した谷川千佳の初個展。

谷川が描くのは、「自画像」だ。美術史を振り返るまでもなく「自画像」の歴史は長い。だが、現代絵画における「自画像」となると、それほど目立った作品は出てきていないように思われる。

谷川の「自画像」は、これまでの美術史上の自画像で見られる重厚さやリアリズムがあるわけではない。身体から臓器が出ていたり、月夜や荒野を背景に描かれるなど、現実感がない。最新作となる『自画像』(2010)では、自身の2つの顔が画面中央で鏡面のように溶け合うさまが描かれている。しかし、2つの顔を描きつつ、手は1つに組み合わさり、「私」という自我を保とうとしているかのようだ。マンガやアニメの影響も見える谷川の自画像は、現代における自画像の一端を示しているのではないだろうか。

谷川が初個展を「自画像」をテーマとして掲げたことは、今後の制作、発表を考えたときベースとなる展覧会となるだろう。自画像の出発から、今後どのような自画像=世界を展開していくのか注目される。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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