大森さやか:黒子の住む森 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 8月 29日 |
大森さやかは1984年福岡県生まれ。2007年大阪芸術大学美術学科油画コース卒業。 2009年多摩美術大学大学院美術研究科修了。このたび当ギャラリーにて2回目の個展となります。 イメージの中の「物質」や「感情」など、異なる要素を持ったもの同士を 作家のフィルターを通して絡み合わせたり蹴散らかしたりしながら再び組み替え、 「意識している部分と、無意識の部分が駆け引きを起こす絵であって欲しい」 という思いで制作しています。 大森は、目が悪いけれども眼鏡をかけずに生活をしています。 眼鏡をかけた時の感覚に頼って裸眼で生活をしていると、 あちこちでぶつかったり空間が把握できなかったりということが起こり、 制作における“無意識の部分と意識の部分”は、この感覚と似ているように思うと語っています。 何故こんなことをしてしまったんだろう、ということをそのままにして 全てをコントロールすることを破棄し、ゆっくりと駆け引きをしながら描かれてゆきます。 作家コメント - 黒子の住む森 -
白い箱の中で緊張感が漂っていた。 静かに居る。白い手で右目を翳しこちらを見ている黒子が、居る。 小さな木の実を一口だけ噛み、汁を零しながら藁に耳を当て微かな音を聞く。 灰色の髪をした黒子は全てを見渡し深呼吸をした。 さぁ、始めよう。 一つ。血相を変えたでかい繭。僕に寄い添ってくる。冷たく白い光を帯びた繭は、 頭の上から垂れてくる。濡れながら体内の水分を取りながら、足まで降りてくる。 その瞬間、白い箱が縮小し、足先から湿った藁がこぼれだす。 二つ。礼拝堂の前で薔薇を被る女。 陽気なダンスに身を委ね、陽気な今宵に身を委ね。 お箸を少しだけおかじりながら。 三つ。薔薇を被るカノジョの声。彼女は口を動かし声は出さずにこう言った。 「KOBINOJAPAN」。 そして小刻みに足を揺らし、親指を藁で覆い隠した。内緒の話。 単純に、大地に足を立て、両手で空を掴むべきではないか。 何故か。 藁はこぼれ落ち、空は大きな悲しみの音をたて、僕の身体へと怒りを持って入ってきた。 魂だけの場所。 あぁ、悲しい。 羽衣の誕生である。 そして僕は結局何もなかったかのように、ゆっくりと手で目を覆い隠す。 僕は目が大事なのだ。 終りの時間-A ゆっくりした時間の中で、白い箱の隅で赤い木が熟した。 熟す流れと共に、灰色もバーミリオンも流れへと。礼拝堂へと。鳥居へと。多摩境へ、と。徒然たる。 全てが終わった-B。 静かな森の中で、黒子がしゃがんでいるのが微かに見えた。 あれが、現実か、いやはや。 黒子の住む森、想像たれ。 プロフィール ※全文提供: ギャラリー58 会期: 2010年9月6日(月)-2010年9月11日(土) |
最終更新 2010年 9月 06日 |