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イングリット・ヴェーバー:ファルブミッテル-アレザリン・バイオレット/ カドミウム・イエロー
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 7月 30日

画像提供:タグチファインアート|Copyright © Ingrid Weber

イングリット・ヴェーバーは1961年ドイツ、オーバーマウバッハ生まれ。1991年にデュッセルドルフ美術アカデミーでヤン・ディベッツによりマイスター・シューラーを取得。2000年にはエルンスト・ポーエンスゲン協会から奨学金を受け、1年間ニューヨークに滞在。現在はデュッセルドルフを拠点に活動しています。2004年7月には目黒区美術館での「色の博物誌・黄ー地の力&空の力」展に出品し、また同年の10月から11月まで府中市美術館において公開制作を行うなど、日本で積極的に作品を発表しています。

微細な顔料の粒子ーファルブミッテル (Farbmittel)
ヴェーバーは一貫して、単色かあるいは極めて限られた数の色彩で画面を構成するモノクローム絵画を制作しています。 彼女は制作の準備段階として、まず注意深く顔料(ファルブミッテルー色の材料)を混ぜ合わせ、それらの配合を変えて微妙に色価(同じ色相のなかでの明暗や灰色の含有量の差異)の異なる何種類かの絵の具を作り出します。たとえば、同じ緑色にしても、そこに混ぜる黄色の顔料や青色の顔料の量、また練り剤の量や種類を変えることよって、さまざまな緑色を作り出すのです。その後、それらのなかからいくつかの色を選び、それぞれの色ごとに作品を制作していきます。

光の表現
科学が色彩を光の屈折率の問題として説明しているように、色彩表現とはすなわち、光の感覚をわれわれに伝えることでもあります。ヴェーバーが注意深く取り扱う顔料も、光があってはじめて、その色の差異を知覚されるわけです。したがって、彼女が自分で作り出した色彩には必ず、彼女が制作しているその時、その場所の光が含まれているといえます。もちろん彼女は自然光で制作しており、スタジオのあるデュッセルドルフの光、ニューヨークの光、また旅行で訪れたヴェニスの光など、光の違いについて大変敏感です。「ファルブミッテル」を通して彼女が表現しようとしているのは、実はこの、ある時ある場所で、自らが体験した、その場限りの光なのかもしれません。

一瞬として同じ光は無く、したがって同じ色というものもありません。それらは刻々と変化していきます。毎日が昨日とは違う日で、かけがえのないものです。ヴェーバーは、あらゆる先入観を廃し、常に新しい気持ちで顔料を混ぜ合わせ、色を生み出し、キャンバスに向かうといいます。ペインティングナイフで顔料を何層にも塗り重ねる作業のうちに、画面に凹凸が生まれ、陰影ができ、また新たな光、色彩が生まれます。

今回の展示は、2008年5月の個展に続く日本で5度目の個展となります。4種類のフォーマットによるアレザリン・バイオレットの作品とメジウムとして卵黄を用いたカドミウム・イエローの作品を展示します。ぜひご高覧下さい。

※全文提供: タグチファインアート


会期: 2010年8月28日(土)-2010年9月25日(土)

最終更新 2010年 8月 28日
 

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