村林由貴:溶け合う層と片隅の妄想。 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 7月 08日 |
京都造形芸術大学GALLERY RAKUにおける大規模な個展を経ての、村林由貴(1986年兵庫生まれ)新作展。 植物の動きから発想を得て、自己の身体を通じ生み出されたもうひとつの生命力を描いた前作に次いで、流れる線や色彩、瑞々しさやおどろおどろしさ、力強さが静かに存在しています。 同大学での個展「溢れ出て止まない世界。」(2010年)にて行われた公開制作では、壁面、天井に配置された作品と、床に描いたドローイングに観客が踏み込み融合することで、世界は一方向にとどまらず幾重にもかさなり私たちの今が、繋がり生み出されている ドローイングでは、「描かれた世界を私が見ているのではなく、描かれたものたちが私たちを見ている。誰かや、何かの視点を介して見るものや記憶、想いは、 日々果てしなく重なり繋がり続け、世界は融合し溶け合っているのではないか」という想いが彼女に生まれたことで、今展「溶け合う層と片隅の妄想。」の着想 になりました。 村林には、線と色彩の間に流れる時間に、観客が浸かれるようにという願いがあります。絵描かれた景色と世界とのあいだに、あなたとわたしが行き交い重なりあえる場所と、私たちを取り巻くものの表裏や定点にとどまらない、村林の視点に期待しています。 村林 由貴 MURABAYASHI Yuki 個展 グループ展 受賞 会期: 2010年6月29日(火)-2010年7月11日(日) |
最終更新 2010年 6月 29日 |
今年4月、京都造形芸術大学GALLERY RAKUにおける個展「溢れ出て止まない世界。」(2010年4月10日~4月25日)で、ギャラリー全体を公開制作によってダイナミックな絵画空間へ変容させた村林による2回目の個展。
今展では、先の個展で見られた混沌は影を潜め、白やグレーを基調したドリッピングされた絵画面の上に有機的、抽象的な黒い線が描かれた絵画と人物等のドローイングが中心に展示されている。前回の個展からすれば大人しい展示かもしれない。
だが、先の個展で「溢れ出した」混沌の世界は、今展では「溶け合う層」として秩序ある構成がなされていることがわかる。例えば、ギャラリーの天井から不規則に吊るされたドローイング作品と壁にかけられた絵画作品の展示にその試みを見ることができるだろう。ドローイング作品は紙の表と裏に対になるように人物が描かれ、紙上において1つ作品へと収斂する。さらにドローイングは、ペインティング作品の鑑賞を干渉するように重なり合い、絵画を多層化していく。
その立体的絵画空間は前回の個展よりもはるかに深められ、奥行きをもたらしていた。