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金沢健一:鉄のエロス
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2010年 6月 25日

鉄による彫刻作品『層』シリーズと映像作品『鉄と熱の風景』(2005-2010)による金沢健一の個展。鉄に熱をかけていく時に生じる風景を撮影した映像作品からは鉄の持つ可塑性が感じられるのに対して、床に置かれた鉄の彫刻作品『層-接点/ノイズ』(2010)からは、金属の滑らかな光沢が無機質な印象を与える。金沢は鉄という素材の多様な性質を映像と彫刻を同時に展示することで、異なる鉄の位相を提示する。

この『層』シリーズは複数枚の同サイズの鉄板とそれを分割した鉄板を組み合わせ、20~30cmほどの小ぶりな建築的構造体に組み立てられている。組み合わされるパーツの変動によって、見る角度によりさまざまなスリット、径路、空間を有し、規則性と変則性のバリエーションがシリーズに広がりをもたらしている。

それは彫刻家・毛利武士郎(1923-2004)による鉄の直方体表面に溝や線、円、スリットが刻まれた『彼の/地球への/置手紙 その1』(1998)を想起させもする。モノリスのように謎めいた鉄の直方形の佇まいは、鉄の表面を通して見えない層へと視線を誘う。

最終更新 2015年 11月 02日
 

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