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大森悟
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2010年 6月 03日

散り始めた桜の花びらが地面に降り積もる今日この頃、eN artsの床にも今しか見れない「たゆたう庭」がある。山本基によるその「庭」は、桜ではなく塩の迷路が大地を這うように、延び広がっているのである。その造形は装飾的な模様のようにも、迷路や地図のようにも見え、鑑賞者の様々な記憶や想像を誘発し、沈思黙考へ誘う石庭ならぬ塩庭とも言える空間が形成されている。「庭」以外にも新展開を見せる地下展示室やドローイング、初の写真作品など充実した山本基の現在を見ることができるだろう。

過去の山本の作品を振り返ると、美術館やギャラリーなどのホワイトキューブ空間より、今展の会場である日本家屋を改装したeN artsのような空間の方がその真価はより鮮明に発揮されるように思われる。作品が場に寄り添い、そこに鑑賞者の記憶や季節、時間が刻まれていく。京都は名庭が多くあることで知られるが、本展もその名に値する庭である。

最終更新 2015年 11月 04日
 

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