松本央:現(うつつ)の果て |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 6月 11日 |
松本央は1983年京都生まれの27歳の画家である。彼は終始一貫自画像を画き続けることを決意した画家でもある。社会の中で自分は何者なのか?それが良く分からない状態で毎日を過ごす現代人は社会の中で様々な顔を待たなくてはならなくなった結果、本当の自分の姿を喪失していく。心の内に問いかける時、答える自分が本物なのか問いかけている自分が本物なのか?社会にでて見られている顔が真の自分の顔なのか仮面なのか?その判別が出来なくなった現代人は、改めて見えない束縛からの開放への戦いを挑まなくてはならない。松本が画く自画像とは、そんな現代社会に生きるありのままの自分を見つめ探す行動的記録日記でもある。 【作家プロフィール】 ※全文提供: COMBINE 会期: 2010年7月19日(月)ー2010年8月18日(水) |
最終更新 2010年 7月 19日 |
108人の自画像を描いた個展「無常の空間―108人の自画像―」(2010年6月22日~7月15日)に続く松本の連続個展の2回目。赤ん坊から子を身ごもる松本の自画像までが円環するように展示され、自画像をテーマとする松本の世界観が凝縮されている。だが、自身では描くことができないはずの赤ん坊や子を生むことができない男性である松本の妊婦像が描かれるなど、自画像の概念は拡張されている。それは、自身が自身を描き続けることで生まれる自画像という名の作品(子ども)を慈しむような世界観なのかもしれない。
松本は学生時代から現在まで自画像を描き続けているが、今展ではサングラスをかけたスーツ姿の男性2人が開け放たれたドアの前に立ちふさがる『Gate of H 』(2010)が新展開を予感させる。他の自画像では目が描かれているため、表情が優しく温和に感じるのに対し、今作品はサングラスをかけて目が見えないため睨まれている(見られている)と感じる。自画像における目の不在が及ぼす心理的な効果が興味深い。