柴川敏之:PLANET ANTIQUES | 2000年後の骨董市 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 6月 02日 |
「2000年後から見た現代社会」をテーマに活動を続ける美術作家、柴川敏之(Toshiyuki Shibakawa, b.1966)の大阪では9年ぶりとなる個展。 広島県福山市の草戸千軒町遺跡とイタリアのポンペイ。柴川の制作活動におけるコンセプトの原点は、この二つの場所にあります。草戸千軒は室町時代、ポンペイは2000年前、共に当時は隆盛を極めた文明都市でしたが、突然の自然災害によって急速に衰え消滅したという共通点を持ちます(*)。地球の年齢と比べて全く短いわずか数千年の間に、人類の文明は急激な進化を続けています。しかしながら、これらの都市の歴史が物語るように、文明は自然災害に遭えば、一瞬のうちに跡形もなく崩れ去る可能性があるのです。いかに人類の優れた頭脳を駆使しても、自然の壮大な力の前にはひれ伏さざるを得ず、この繰り返しが人類の歴史となって堆積され、現代を構築するに至っているのです。(*草戸千軒町遺跡 は、現在の研究では約500年前に衰退した説が有力になっています。 ) 現代に作られた様々な日常品を「化石化」することにより、2000年後の世界から見る現代へと鑑賞者をタイムスリップさせ、改めて「現代」を問い直すことをコンセプトに発表活動を続ける柴川は、近年では全国各地の公立美術館を中心に断続的に発表を続けています。彼の名が全国に知れ渡ったのは2003年の広島県立歴史博物館で開催された展覧会です。現代美術作家が博物館で個展を開催した国内初の事例としてのみならず、会期中のワークショップでは6000人超の参加者を集め、近年の公立美術館・博物館の運営方法・方向性に大きな一石を投じた記念碑的な企画となりました。以後、佐倉市立美術館、高知県立美術館、青森県立美術館、十和田市現代美術館などで多くの地元の人々を巻き込み、各々の土地が培ってきた歴史を起点に、柴川が提示する現代から未来を通じて、時の流れのダイナミズムを体感させる様々な大規模な企画を実現しております。 当展では「2000年後の骨董市」と題し、柴川の作品群と現代の「骨董品」とのコラボレーションをインスタレーションスタイルにてギャラリー空間内に展開いたします。弊廊が位置する老松通り界隈は、大阪天満宮の参道という立地に始まり、戦後以降関西有数の美術・骨董街として発展した街として知られています。サイトスペシフィックな要素を常に取り入れ、歴史的な遺構や、出土物との展示を中心におこなってきた柴川にとって、今回の「骨董品」とのコラボレーションは従来の彼のスタイルとは一線を画するものがあります。原型を失った数百年、数千年前の出土物とは異なり、「骨董品」は現在性を失っているものの、そのかたちにおいては現代の人々がはっきりと存在を認識できるものであり、まだ日常に取り込むことのできる現在と過去が同居した存在といえます。今回新たな要素として加わる「骨董」は、彼の基本コンセプトであった過去・現在・未来の3つの軸それぞれの境界線の間にある時間経過のプロセスとして、コンセプトの更なる深化を可能とするのです。現在を通過した「骨董品」から、柴川が作品で表現する2000年後へと、かたちと意味を変化させていく段階的な時間の流れを、老松通りという土地のアイデンティティと共に体感していただければと思います。 当展は、この「骨董」のテーマで今後シリーズ化して展開していく柴川展の第一弾として開催いたします。まずは柴川の作品群と初めて交わることになる「骨董」との邂逅(かいこう)をぜひお楽しみください。 柴川 敏之(Toshiyuki Shibakawa) ※全文提供: YOD Gallery 会期: 2010年6月15日-2010年7月31日 |
最終更新 2010年 6月 15日 |