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大森悟
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 26日

series 花かげ 《存留》|桜の花・小鳥・冷凍庫
画像提供:ギャラリー58|© Satoru Omori

大森悟は1969年茨城県生まれ。1999年東京芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。美術博士。主に現象学など身体知覚を独特な視点で取り上げ、光と影をテーマにした映像インスタレーションで注目を集めています。

このたび発表するインスタレーション「花かげ-存留(そんりゅう)-」は、ある家族の記念日を記録しようと続けた行為と、その人物の死、そして取り残された「願い」があります。今回も空を見るための景色を作ります。永遠の眺めを求めて。

【作家コメント】
子供の頃、残酷な遊びをしたことがある。
お玉杓子を冷蔵庫の冷凍室に入れて凍らせ、それから解凍をする。すると生き返った。
命は時を超えてとどめられると思って静かに興奮した。いや感動した。

その感動は、何時しかわがままな貪欲さを生む。
命はある景色にとけ込んでいることがある。
それごと永遠にとどめることは出来ないのかと。
この全く当たり前の欲求なのだが毎日の生に入り込んでしまい、
喪失感を埋める物としての代用品を探すような、
あるいは満たされた一日として納得する方法としての日記のような確認や仕掛けを
改めて求めているわけではない。
今回の作品は、過去と現在を再現をすることだけでなく、
同時進行で新たな過去を生み出すそれは写真表現に似ている
しかし、現実的には個人にとって意味を持たされた景色は
いつか解凍されて生き返ったとしても戻る場がないのである。
残酷というより、滑稽な物語の終焉は許されないのかもしれない。
つまり冷凍庫の電源は切ることが出来ないのだ。

【プロフィール】
1969年 茨城県生まれ
1994年 東京芸術大学美術学部油画科卒業、大橋賞 作品大学美術館買い上げ
1999年 東京芸術大学大学院美術研究科博士課程修了、作品大学美術館買い上げ <個展>
1997年 ベリーニの丘ギャラリー(横浜)
2000・01・04・06・09年 コバヤシ画廊(銀座)
2008・09年 ギャラリーとわーる(福岡)
2008年 ギャラリー58(銀座)

※全文提供: ギャラリー58


会期: 2010年5月31日-2010年6月5日

最終更新 2010年 5月 31日
 

編集部ノート    執筆:田中みずき


散り始めた桜の花びらが地面に降り積もる今日この頃、eN artsの床にも今しか見れない「たゆたう庭」がある。山本基によるその「庭」は、桜ではなく塩の迷路が大地を這うように、延び広がっているのである。その造形は装飾的な模様のようにも、迷路や地図のようにも見え、鑑賞者の様々な記憶や想像を誘発し、沈思黙考へ誘う石庭ならぬ塩庭とも言える空間が形成されている。「庭」以外にも新展開を見せる地下展示室やドローイング、初の写真作品など充実した山本基の現在を見ることができるだろう。

過去の山本の作品を振り返ると、美術館やギャラリーなどのホワイトキューブ空間より、今展の会場である日本家屋を改装したeN artsのような空間の方がその真価はより鮮明に発揮されるように思われる。作品が場に寄り添い、そこに鑑賞者の記憶や季節、時間が刻まれていく。京都は名庭が多くあることで知られるが、本展もその名に値する庭である。


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