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金沢健一:鉄のエロス
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 06日

画像提供:Contemporary Art and Spirits(CAS)

鉄を熔断して作る「音のかけら」や、鉄の立体作品で知られる金沢健一の彫刻作品と映像作品をご紹介します。これは、鉄に熱をかけていく時に生じる、風景です。いつもは、作っている作家自身も見られない有機的な鉄のエロスの世界が広がっています。この映像は作家と鉄とのいわば一対一の会話でもあるのですが、みるものにとってそこには、それが何かという具体的な意味よりも、原初の地球ができあがっていく時の蠢きのようにも見える、不思議な世界がひろがります。

金沢健一 KANAZAWA Kenichi
1956  東京都生まれ
1979 東京芸術大学美術学部工芸科鍛金専攻卒業
1981 東京芸術大学大学院美術研究科修了

個展 (2000年以降の主な活動):
2000  ギャラリーなつか('02,'03,'05,'08) 「ラボラトリィ2 共鳴する空間 金沢健一 音のかけら」新津市美術館/新潟
2001  「金沢健一 音のかけら展」感覚ミュージアム ウォーターガーデン/宮城
2002  「はがねの変相-金沢健一の仕事」 川崎市岡本太郎美術館/神奈川
2003  「音のかたちー金沢健一展」 安曇野ちひろ美術館/ 長野、「金沢健一 振動態展」 KSPギャラリー/神奈川
2004  「金沢健一展」 鉄の形と色と音」板室観光ホテル大黒屋/栃木、「金沢健一「音のかけら」~目と耳と手を結ぶ」 川越市立美術館/埼玉
2005 慶応義塾大学日吉キャンパス来往舎現代藝術展2「金沢健一  響きの庭 ー目で聴く音、耳で見る形ー」/神奈川、五感の都市へ 仙台芸術遊泳 「共鳴する美術館<音のかけら>金沢健一展」宮城県美術館
2006 「金沢健一「音のかけら」とワークショップ展」川越市立美術館市民ギャラリー/埼玉('07,’08,'09)
2007 「金沢健一「音のかけら」とパフォーマンス」上野の森美術館ギャラリー/東京

グループ展歴多数。

コレクション:
1981 国立国際美術館/大阪
1982 東京都現代美術館
1988 原美術館ARC/群馬
1994 ファーレ立川/東京
1997 板橋区立美術館/東京
1998 愛知県児童総合センター/愛知
2000 新潟市新津美術館
2002 静岡県立美術館、資生堂アートハウス/静岡
2004 北海道立近代美術館、川越市立美術館/埼玉
2009 高松市美術館

※全文提供: Contemporary Art and Spirits(CAS)


会期: 2010年5月8日-2010年6月12日

最終更新 2010年 5月 08日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


鉄による彫刻作品『層』シリーズと映像作品『鉄と熱の風景』(2005-2010)による金沢健一の個展。鉄に熱をかけていく時に生じる風景を撮影した映像作品からは鉄の持つ可塑性が感じられるのに対して、床に置かれた鉄の彫刻作品『層-接点/ノイズ』(2010)からは、金属の滑らかな光沢が無機質な印象を与える。金沢は鉄という素材の多様な性質を映像と彫刻を同時に展示することで、異なる鉄の位相を提示する。

この『層』シリーズは複数枚の同サイズの鉄板とそれを分割した鉄板を組み合わせ、20~30cmほどの小ぶりな建築的構造体に組み立てられている。組み合わされるパーツの変動によって、見る角度によりさまざまなスリット、径路、空間を有し、規則性と変則性のバリエーションがシリーズに広がりをもたらしている。

それは彫刻家・毛利武士郎(1923-2004)による鉄の直方体表面に溝や線、円、スリットが刻まれた『彼の/地球への/置手紙 その1』(1998)を想起させもする。モノリスのように謎めいた鉄の直方形の佇まいは、鉄の表面を通して見えない層へと視線を誘う。


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