rolling |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2009年 3月 06日 |
ギャラリーに入った瞬間、「やられた!」と思ったのは私だけではないだろう。東はAMPGでの最後の展示だからと力むでもなく、あるいは感傷に耽って昔を懐かしむでもなく、むしろあっけらんかんとした佇まいの作品を発表した。これまでのようなコンセプトシートもなければ展示空間自体がギャラリー手前のスペースに留まり、作品一点とその映像だけが展示されたシンプルな構成である。 今回の作品は、AMPGの始まり(《式2》、2007年4月)と同様、松を使った作品。樹齢38年の松をボルトで固定し高速回転させるという、言葉にしてしまえばそれだけの作品である。それ以上速度を上げると回転している物体が松だと認識できない早さだというが、言うまでもなく、ぐるぐると、しかも高速で回り続ける松の姿は自然界では絶対に見られない。かつて東は《逆転の庭2(歩庭)》(2007年9月)という作品で植物をプランターに載せ時速2キロの速さで動かした経験を持つが、鑑賞者に与えるインパクトはその比ではないのではないだろうか。 長谷川等伯《松林図屏風》(六曲一双屏風、桃山時代)に象徴されるように、日本において松は少なからず幽玄というイメージを担わされてきた。その松を、回転させる。幽玄もなにもなく、ただただ回転させる。ユーモアに富んだこうした発想力こそ、東信の真骨頂だと私は思う。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |